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2015年5月12日火曜日

微分方程式講義(2015年版)VII

3.2 ロンスキアンと定数変化法 


変数係数の2階方程式

(3.4)    y'' + a(x)y' + b(x)y  = f(x) 

を考える。 f(x) ≡ 0  とおいた  斉次微分方程式 は、

(3.5)    y'' + a(x)y' + b(x)y   = 0

である。 ここで、   a(x),  b(x),  f(x)   は実数上のある区間 I で定義されているとする。

(3.4)  の一つの特殊解を y₁ とする。 このとき、次の定理がなりたつ。



定理 3   y₁   (3.4) の一つの特殊解とする。 さらに 斉次方程式 (3.5) 

一般解を   y₀ とすると、 非斉次方程式 (3.4)  の一般解 y は、 

y = y₀+ y₁   で与えられる。
 


証明は、 y を一般解として y - y₁  を考えればよい。 この差は、 斉次方程式 (3.5) の
 
一般解になる。
 




定理 4   y₁, y₂   斉次微分方程式 (3.5) の解とする。 このとき、

  W[y₁, y₂](x)  ≠ 0   または、  W[y₁, y₂](x) ≡ 0  である。




(証明) ロンスキアン W[y₁, y₂]  のみたすべき 微分方程式を導けばよい。 



この定理は、一般の場合にも拡張できることを注意しておく。


定理 4 から、次の定理が直ちにしたがう。




定理 5   a(x),  b(x)  を区間 I 上の連続関数とする。 x₀ を I 上の1点とする。

このとき、 微分方程式 

             y'' + a(x)y' + b(x)y   = 0

の解で次の条件をみたす解  y₁, y₂が存在する。


       y₁(x₀) = 1, y'₁(x₀) = 0 ;    y₂(x₀) = 0, y'₂(x₀) = 1.  


 

このとき、  W[y₁, y₂](x)  ≠ 0   (x ∈ I)  である。


ここで、 W[y₁, y₂](x₀) = (単位行列の行列式) = 1    を注意する。  





定理 6  ベクトル空間  

        V = {y ;   y'' + a(x)y' + b(x)y   = 0

の次元は2である。



(証明) y ∈ V すなわち

             y'' + a(x)y' + b(x)y   = 0
とする。 


y₁, y₂  定理 5 の2つの解とする。 このとき 

W[y₁, y₂](x)  ≠ 0   (x ∈ I)  であるから、行列式論の クラーメルの公式 により

I 上の関数 c ₁(x),   c₂(x) で、
 

      c ₁(x) y₁+   c₂(x) y₂ =  y        (1),        


      c ₁(x) y'₁+   c₂(x) y'₂ =  y'      (2),    

となるものが存在する。  (1) を微分して (2) を使うと、

       c' ₁(x) y₁+   c'₂(x) y₂ = 0      (3)

がしたがう。 さらに、 (2) を微分して


c' ₁(x) y'₁+   c'₂(x) y'₂+ c ₁(x) y''₁+   c₂(x) y''₂ =  y''      (4)    
 


(1)×b(x),  (2)×a(x),  (4)  を  y'' + a(x)y' + b(x)y   = 0 に代入して 整理すると


     c' ₁(x) y'₁+   c'₂(x) y'₂

 + c ₁(x) (y''₁+ a(x)y'₁+ b(x)y₁) +  c ₂(x) (y''₂+ a(x)y'₂+ b(x)y₂) = 0


 となり、結局 

       c' ₁(x) y'₁+   c'₂(x) y'₂= 0      (5)

   がいえる。 (3) と (5) および W[y₁, y₂](x)  ≠ 0  なることから、

 c' ₁(x)  ≡ 0,    c'₂(x)  ≡ 0  となり、 

 
   c ₁(x)  = C₁,    c₂(x) =  C₂  (定数) 


がいえる。  つまり、 y =  C₁y₁+ C₂ y₂  となり 

y は y₁と y₂の一次結合である。   これは、V が 2次元であることを示している。

 (証明終わり)




一般に、 ロンスキアンが 0 にならない解 y₁, y₂ を (3.5)  の

基本解 または 基本解系という。



定理 7  非斉次方程式 

(3.4)    y'' + a(x)y' + b(x)y  = f(x) 

 
 の一般解は、 

(3.6)     y =  y₁(-y₂f(x) / W[y₁, y₂] dx + C₁) 

                + y₂( y₁f(x) / W[y₁, y₂] dx + C₂) 

 で与えられる。 ここで、 y₁, y₂   は (3.5) の基本解とする。


(証明)  定数変化法による証明を与える。

 y  = c ₁(x) y₁+   c₂(x) y₂ とおいて、

c ₁(x) ,   c₂(x)  をうまく選んで この  y   が (3.4) の解になるようにしよう。

この方法は、斉次方程式の解の1次結合における

定数を関数に変えるという意味で、定数変化法と呼ばれる。

                 y'  = c ₁(x) y'₁+   c₂(x) y'₂ +  (c' ₁(x) y₁+   c'₂(x) y₂)       (1)

なので、 

       c' ₁(x) y₁+   c'₂(x) y₂ = 0      (2)

 なるようにしよう。 さらに、(1)  を微分して (2) を使うと 

                 y'' = c' ₁(x) y'₁+   c'₂(x) y'₂+ c ₁(x) y''₁+   c₂(x) y''₂      (3)

 となるから、定理 6 の証明と同様に 

y'' + a(x)y + b(x)y   = f(x) に代入して整理すると、 

     c' ₁(x) y'₁+   c'₂(x) y'₂

+ c ₁(x) (y''₁+ a(x)y'₁+ b(x)y'₁) +  c ₂(x) (y''₂+ a(x)y'₂+ b(x)y'₂) = f(x)

となり、 

                                        c' ₁(x) y'₁+   c'₂(x) y'₂= f(x)      (4)

が導かれる。 (2), (4)  を c' ₁(x) ,  c'₂(x) について連立して解くと

クラーメルの公式 により





定理 3 と 定理 7 の結論を組み合わせると 次の結果が得られる。



公式 3.1   定数係数の2階方程式

 (3.1)    y'' + ay' + by  = f(x) 

の一般解  は、次で与えられる。  



 例をいくつか与える。  





この節の最後に、ダランベールの階数低下法 について述べよう。


ジャン・ル・ロン・ダランベール(Jean Le Rond d'Alembert、1717年11月16日 - 1783年10月29日)

18世紀フランスの哲学者、数学者、物理学者。百科全書派知識人の中心者。


これは、斉次方程式の1つの解を用いて非斉次方程式の解を求める方法である。 

斉次方程式

  (3.5)    y'' + a(x)y' + b(x)y  = 0

の一つの解 y₁  がわかったとする。 非斉次方程式

  (3.4)    y'' + a(x)y' + b(x)y  = f(x) 

 
 の一般解を y = uy₁  の形で求めよう。 

         y' = uy'₁+ u' y₁,      y'' = uy''₁+ 2 u' y'₁+  u'' y₁

なので、 (3.4)  に代入すると

u'' y₁+   u' (2y'₁+ a(x)y₁) +  u(y''₁+ a(x) y'₁+  b(x) y₁) = f(x) 

となるが、  y''₁+ a(x) y'₁+  b(x) y₁= 0   であったから 

      u'' y₁+   u' (2y'₁+ a(x)y₁) = f(x) 

これは、  v = u'   についての1階線形方程式になる。 

      v' +  [(2y'₁+ a(x)y₁) / y₁] v = f(x)/y₁ 

したがって 

   v(x) =  exp (-∫ [(2y'₁+ a(x)y₁) /y₁] dx) 
      ×[∫ (f(x)/y₁) exp (∫ [(2y'₁+ a(x)y₁) /y₁] dx) dx]

 となる。 

ところで、

   [(2y'₁+ a(x)y₁) /y₁] dx = 2 (y'₁/y) dx  + a(x) dx = 2log y₁+ A(x)

なので

かくして次の公式を得る。
 
 

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