ノート 2-23 の解答は間違ってましたので、正しいものと差し替えました。
2.4 完全微分方程式
微分形の方程式
(2.9) P(x,y)dx + Q(x,y)dy = 0
において、
(2.10) P(x,y) = ∂F(x,y)/∂x, Q(x,y) = ∂F(x,y)/∂y
となる F(x,y) が存在するとき、(2.9) は 完全微分方程式 という。
このとき、 (2.9) は 全微分 dF(x,y) を用いて
(2.11) dF(x,y) = [∂F(x,y)/∂x] dx + [∂F(x,y)/∂y]dy = 0
とかける。 したがって、 (2.10) をみたすとき、 (2.9) の解は、
(2.12) F(x,y) = C (C は、積分定数)
とかける。 特に F が C²級 とすると
∂P(x,y)/∂y = ∂²F(x,y)/∂y∂x = ∂²F(x,y)/∂x∂y = ∂Q(x,y)/∂x
つまり
(2.13) ∂P(x,y)/∂y = ∂Q(x,y)/∂x
がなりたつ。 実は、逆がいえる。
定理 1 P(x,y), Q(x,y) は、 C¹級 とする。
(2.9) P(x,y)dx + Q(x,y)dy = 0
が 完全形 であるための 必要かつ十分条件は、
(2.13) ∂P(x,y)/∂y = ∂Q(x,y)/∂x
である。
(証明) (2.9) が完全形なるとき、 (2.13) が成り立つことはすでに示した。
ぎゃくを示そう。 今 F(x,y) = ∫P(x,y)dx + R(y) ととり、 R(y) をうまく取れば
dF(x,y) = 0 なることを示すとよい。 ∂F(x,y)/∂x = P(x) なので
∂F(x,y)/∂y = (∂/∂y)∫P(x,y)dx + R'(y) = Q(x,y)
となるように R(y) を決めるとよい。 ところで (2.13) より
(∂/∂x)[Q(x,y) - (∂/∂y)∫P(x,y)dx ] = ∂Q(x,y)/∂x - (∂²/∂x∂y) ∫P(x,y)dx
= ∂Q(x,y)/∂x - (∂/∂y)(∂/∂x) ∫P(x,y)dx = ∂Q(x,y)/∂x - ∂P(x,y)/∂y = 0
となり、 Q(x,y) - (∂/∂y)∫P(x,y)dx は x に無関係、 つまり y だけの関数になる。
よって R'(y) = Q(x,y) - (∂/∂y)∫P(x,y)dx より この式を y で積分して
R(y) = ∫[Q(x,y) - (∂/∂y)∫P(x,y)dx ]dy
とすればよい。 実際
dF(x,y) = [∂F(x,y)/∂x]dx + [∂F(x,y)/∂y]dy
= P(x,y)dx + [R'(y) + (∂/∂y)∫P(x,y)dx] dy
= P(x,y)dx + [Q(x,y) - (∂/∂y)∫P(x,y)dx + (∂/∂y)∫P(x,y)dx] dy
= P(x,y)dx + Q(x,y) dy
がなりたつからである。 例をあげる。
積分因子
一般に、微分方程式 (2.9) は完全ではない。 条件 (2.13) を満たさないものは多数ある。
しかし、ある関数 M(x,y) を (2.9)の両辺にかけると、完全になる場合がある。 つまり
(2.14) M(x,y)P(x,y)dx + M(x,y)Q(x,y)dy = 0
が 完全形 になるとき、 このような関数 M(x,y) のことを、積分因子 という。
従って、このとき
(2.15) (∂/∂y)(M(x,y)P(x,y)) = (∂/∂x)(M(x,y)Q(x,y))
がなりたつ。 すなわち M(x,y) は
(2.16) P(∂M/∂y)- Q (∂M/∂x) = M((∂Q/∂x)- (∂P/∂y))
をみたすことが必要十分である。 (2.17) は M について1階偏微分方程式で、
これを解くことは、一般に容易ではない。 しかし特殊な場合には、M を求めることは可能である。
非常に都合のいい条件設定だが、M が x のみの関数となったとする。
このとき、(2.16) の左辺第1項は消えるので、さらに都合のよい仮定だが
(Qx- Py)/Q が x のみの関数であれば 変数分離形として積分因子 M が求まる。
その他の場合も考えられる。 ここでは、この場合も含め3つの特殊な場合を考える。
(i) (Qx- Py)/Q が x のみの関数の場合
M(x,y)=M(x) と考えることができる。 このとき、(2.16) より
dM/dx = [1/Q](Py - Qx) M
となり M(x) = exp ( ∫(Py - Qx)/Q dx) が積分因子となる。
(ii) (Qx- Py)/Q が y のみの関数の場合
M(x,y)=M(y) と考えることができる。 このとき、(2.16) より
dM/dy = [1/P](Qx- Py) M
となり M(y) = exp ( ∫(Qx- Py)/P dx) が積分因子となる。
(iii) P(x,y), Q(x,y) が同次式の場合、 つまり
P(λx, λy) = λn P(x, y), Q(λx, λy) = λn Q(x, y) の場合。
このとき、
M(x,y) = 1/ (xP(x,y) + yQ(x,y)) は、積分因子になる。
これを確かめる。
ここで、例を2つあげよう。
2.5 その他の微分方程式
この節では、求積法 により解くことのできる方程式を挙げよう。
1.ベルヌーイ型微分方程式
(2.17) y' + a(x)y + b(x)yⁿ = 0
を考える。 このような y についての 2次式を含む非線形微分方程式を
ベルヌーイ型微分方程式 という。 n=0 または n=1 のとき、(2.17) は1階線形方程式になる。
(2.17) は線形でないが、置き換えによって線形に直せる。
u = y1-n とおくと、 u' = (1-n)y-n となる。 ここで uyⁿ = y に注意する。
したがって、(2.17) は、
u'yⁿ /(1-n) + a(x)u yⁿ + b(x)yⁿ = 0
すなわち
(2.18) u' + (1-n) a(x)y = - (1-n) b(x)
となる。 これは、1階線形微分方程式なので 2.3節の方法により解ける。
最後に n は、任意の正数でも差し支えないことを注意しておく。
2. リッカチ型方程式
y について2次の非線形方程式
(2.19) y' = a(x) + b(x)y + c(x)y²
を考える。 この形の方程式を リッカチ型方程式 という。
一般には、この方程式は求積法により解けない。
しかし、(2.19) の一つの解が求まれば 求積法により解くことができる。
y = y₀(x) を (2.19) の一つの解とする。 u = y - y₀ とおく。 y' = u' + y₀' なので 代入して
u' + y₀' = a(x) + b(x) u + b(x)y₀ + c(x)y₀² + 2c(x)u y₀ + c(x)u²
整理すると、
u' = (b(x) + 2c(x) y₀)u + c(x)u² + (y₀' + b(x)y₀ + c(x)y₀²)
この式の最後の項は、0 なので
(2.20) u' = (b(x) + 2c(x) y₀)u + c(x)u²
となり、 これは n=2 の場合の ベルヌーイ型微分方程式となる。
さらに v=1/u とおくと u'= -v'/v² なので (2.20) に代入すると
-v'/v² = (b(x) + 2c(x) y₀)[1/v] + c(x)[1/v²]
となり -v²倍して方程式
v' = -(b(x) + 2c(x) y₀) v - c(x)
が得られる。 これは、v についての1階線形方程式なので
これを解いて (2.19) の解が得られる。
3. クレロー型方程式
(2.21) y = xy' + f(y')
の形の方程式を クレロー型方程式 という。 ただし f は C¹級とする。
(2.21) を x で微分して y' = xy'' + y' + f(y')y'' つまり
y''(x+ f(y')) = 0
これから
(i) y''=0 の場合
y'' = 0 ⇒ y' = C ⇒ y = Cx + D
ところで、 (2.21) より D = f(C) となるから
y = Cx + f(C) (C: 任意定数) が解。
(ii) x+ f(y') =0 の場合
このとき y' = p をパラメータとすると (2.21) と連立して
(2.22) x = - f '(p), y = -p f '(p) + f(p)
がえられる。 この p をパラメータとする 曲線 (x(p), y(p)) は (2.21) の解であるが
(i) の解の任意定数 C をどのように選んでもこの解は得られない。 この意味で この曲線を
(2.21) の 特異解 という。
実は、(i) の直線群の包絡線が (2.22) で与えられる。
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