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2014年6月25日水曜日

微分方程式講義 XII

 


第6章 連立微分方程式の解の漸近挙動

6.1 相空間解析

つぎの連立微分方程式の初期値問題を考える。

(6.1)        y1' =  y2,     y2' = - y1  ;   y1(0) = c1,    y2(0)= c2

 この問題の解が、

 (6.2)        y1(x)  =  c1 cos x + c2 sin x ,  
                y2(x) = - c1 sin x + c2 cos x  

で与えられることは、5章で証明した。 これを、行列-ベクトル記法で表現してみる。



上図の円周を (6.1)  の 解軌道 または 解曲線 という。 

このように、独立変数 x  が動くとき、解がどのように y1-y2 平面上を動くかを考察するする事

は重要である。 このとき、考察すべき y1-y2 平面を 相空間 と言い、この問題の解析を 

相空間解析 という。 

通常の記法にならって、この章では、

                    x → t ,     y1 → x ,    y2 → y

として、 相空間 xy 平面上で考えることにする。 また微分の記法を



          x˙ = dx/dt  ,     y˙ = dy/dt 

のように dot で表す。 



さて、相空間解析においては、つぎの形の連立微分方程式が研究の中心になる。

(6.3)        x˙ = f(x, y),     y˙ = g(x, y) 
右辺の関数 f(x, y), g(x, y) が定義域の各点の近傍でリプシッツ連続なるとき、前章で証明した
ように初期値問題の解は一意であるから、 解軌道は交わらない ことがわかる。
システム (6.3) のように、f(x, y), g(x, y) が時間変数 t  を含まないとき、 自励系 という。
(6.3) において、f(a, b) = 0,   g(a, b) = 0 となる点 (a, b)  が存在するとき、 この点  (a, b)   を
(6.3) の 平衡点 または 特異点 という。 
さて、 (a, b)   が (6.3) の 平衡点 して、座標系の平行移動 
     x゜= x - a ,    y゜= y - b
を行えば、 微分方程式  (6.3)  は、  
(6.4)        (x゜)˙ = f゜(x゜, y゜),     (y゜)˙ = g゜(x゜, y゜) 
と書きなおされる。 ここで、
     f゜(x゜, y゜) = f(x゜+ a, y゜+ b) ,     g゜(x゜, y゜) = g(x゜+ a, y゜+ b)
              
であり、 
     f゜(0, 0) = f(a, b) = 0 ,     g゜(0, 0) = g(a, b) = 0
なので、 原点 (0,0)  が、 (6.4)  の平衡点になる。 従って、 原点が 自励系 (6.3)   
平衡点であるとして一般性は失わない。 
次節では、線形微分方程式に対する相空間解析を行う。   
6.2 連立線形微分方程式の解軌道
a, b, c, d  を定数として、連立線形微分方程式 

(6.5)        x˙ = ax + by,     y˙ = cx + dy
を考えよう。 このとき、 (6.5) は 原点 (0,0)  を平衡点として持つ。 (6.5) の解軌道の様子は、
行列     ( ( a, c )t , ( b, d )) 固有値 と 固有ベクトル を調べることにより、完全に
きまる。 4章1節で示したように、次の結果がなりたつことを思い出そう。

この解の表示を用いて、t → ∞ としたときの解軌道の様子を描くことができる。 

これらは、λ1,  λ2 , α, β, λ, の符号や値などによって決まる。 

(i)  の場合を調べる。 λ1  ≧  λ2   として差し支えない。 逆符号の場合は x と y を入れ替えて

考えればよい。
(ii) の場合はつぎのようになる。
(iii) の場合は、つぎのようになる。

例を2つあげよう。 教科書と同じ方程式の例である。

 


ここで、 (i), (ii), (iii)  の3つの場合に、軌道図を描く際の注意を述べておく。


 



















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