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2017年4月24日月曜日

微分方程式講義(2017年版)III 

予定では、2回目の講義で2章の3節まで説明する積りだったが時間的にとても無理でした。微分方程式の実例が多すぎたのが理由です。解き方の解説より、具体例を沢山解くことのほうが大事なので、教科書の演習問題は頑張って解いてください。

3回目の講義は、この原稿のIIの2章の2節のつづきから始める。


2.4 完全微分方程式

 

微分形の方程式

(2.9)    P(x,y)dx + Q(x,y)dy = 0

において、 


(2.10)    P(x,y) = ∂F(x,y)/∂x,       Q(x,y) = ∂F(x,y)/∂y      

となる F(x,y)  が存在するとき、(2.9)  は 完全微分方程式 という。 

このとき、 (2.9)  は 全微分 dF(x,y)  を用いて

(2.11)    dF(x,y) = [∂F(x,y)/∂x] dx + [∂F(x,y)/∂y]dy = 0

とかける。 したがって、  (2.10) をみたすとき、 (2.9) の解は、 

(2.12)    F(x,y) = C   (C は、積分定数)

とかける。  特に F が C²級 とすると 

      ∂P(x,y)/∂y = ∂²F(x,y)/∂y∂x =  ∂²F(x,y)/∂x∂y = ∂Q(x,y)/∂x

つまり


(2.13)    ∂P(x,y)/∂y  =  ∂Q(x,y)/∂x       

がなりたつ。 実は、逆がいえる。



定理 1 P(x,y),  Q(x,y)  
は、 C¹級 とする。


 (2.9)    P(x,y)dx + Q(x,y)dy = 0
 

が 完全形 であるための 必要かつ十分条件は、
   
 (2.13)    ∂P(x,y)/∂y  =  ∂Q(x,y)/∂x     


である。


(証明) (2.9)  が完全形なるとき、 (2.13) が成り立つことはすでに示した。 

逆を示そう。 今  F(x,y) =P(x,y)dx + R(y)  として、  R(y) をうまく取れば

dF(x,y) = 0  なることを示すとよい。 ∂F(x,y)/∂x = P(x)   なので 

   ∂F(x,y)/∂y =  (∂/∂y)P(x,y)dx + R'(y) = Q(x,y) 

となるように R(y)  を決めるとよい。  ところで (2.13) より

     (∂/∂x)[Q(x,y)  - (∂/∂y)P(x,y)dx ] =  ∂Q(x,y)/∂x - (∂²/∂x∂y) ∫P(x,y)dx
                                
       =    ∂Q(x,y)/∂x -  (∂/∂y)(∂/∂x) P(x,y)dx  =   ∂Q(x,y)/∂x -  ∂P(x,y)/∂y  = 0        

となり、 Q(x,y)  - (∂/∂y)P(x,y)dx は x に無関係、 つまり y だけの関数になる。 

 よって   R'(y) = Q(x,y) - (∂/∂y)P(x,y)dx  より、 この式を y で積分して

             R(y) = ∫[Q(x,y) - (∂/∂y)P(x,y)dx ]dy

とすればよい。 実際

dF(x,y) = [∂F(x,y)/∂x]dx + [∂F(x,y)/∂y]dy 
              
    = P(x,y)dx + [R'(y) + (∂/∂y)P(x,y)dx] dy  

             =  P(x,y)dx + [Q(x,y)  - (∂/∂y)P(x,y)dx + (∂/∂y)P(x,y)dx] dy  

             =  P(x,y)dx + Q(x,y) dy 

がなりたつからである。 


例をあげる。










積分因子

一般に、微分方程式 (2.9) は完全ではない。 条件 (2.13) を満たさないものは多数ある。

しかし、ある関数 M(x,y) を (2.9) の両辺にかけると、完全になる場合がある。 つまり

(2.14)    M(x,y)P(x,y)dx + M(x,y)Q(x,y)dy = 0
 

が 完全形 になるとき、 このような関数  M(x,y) のことを、積分因子  という。

従って、このとき

(2.15)   (∂/∂y)(M(x,y)P(x,y))  =   (∂/∂x)(M(x,y)Q(x,y))

がなりたつ。 すなわち M(x,y) は

(2.16)   P(∂M/∂y)- Q (∂M/∂x) = M((∂Q/∂x)- (∂P/∂y)) 

をみたすことが必要十分である。 (2.16) は M について1階偏微分方程式で、 

これを解くことは、一般に容易ではない。 

しかし特殊な場合には、M を求めることは可能である。

非常に都合のいい条件設定だが、M が x のみの関数となったとする。 

このとき、(2.16)  の左辺第1項は消えるので、さらに都合のよい仮定だが

(Qx- Py)/Q が x のみの関数であれば 変数分離形として積分因子 M  が求まる。


その他の場合も考えられる。 ここでは、この場合も含め3つの特殊な場合を考える。


(i)  (Qx- Py)/Q が x のみの関数の場合

M(x,y)=M(x)  と考えることができる。 このとき、(2.16) より

dM/dx = [1/Q](Py - Qx) M  

となり    M(x) = exp ( (Py - Qx)/Q dx)  が積分因子となる。


(ii)  (Qx- Py)/Q が y のみの関数の場合

M(x,y)=M(y)  と考えることができる。 このとき、(2.16) より

dM/dy = [1/P](Qx- Py) M  

となり    M(y) = exp ( (Qx- Py)/P dy)  が積分因子となる。



(iii)  P(x,y),   Q(x,y)   が同次式の場合、 つまり

P(λx, λy) = λn P(x, y),    Q(λx, λy) = λn Q(x, y)      の場合。

 このとき、

 M(x,y) = 1/ (xP(x,y) + yQ(x,y))   は、積分因子になる。  

これを確かめる。  講義ではこの部分は省略する。
ここで、同次形の特徴づけを用いる。



ここで、積分因子を求めることによって解ける微分方程式の例を2つあげよう。












 


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