今年度は、4月13日開始。 学生諸君、半年の間どうかよろしく。
微積分の初歩を知っていれば高校生でも解かるように講義するつもりである。講義の内容をこれまでと同様にこのブログの記事にします。講義で聞きもらしたりした事があれば、この記事を見てください。興味のある高校生の方も、どうぞ読んでみてください。
昨年と同じく 教科書はこれです。
内容は、つぎのようになっている。
教科書は、常微分方程式と偏微分方程式の基礎部分を解説している。
その内、私の担当部分は前半の常微分方程式の部分で、1章から6章2節までです。
昨年の実績からいうと、14回の講義で終了します。しかし、試験の範囲は、1章から5章までとする。
教科書に沿ってほぼ忠実に講義する予定ですが、それ以外のトピックについて話をする場合もあります。 例題はできるだけ教科書と違うのを選ぶつもりです。
講義原稿を、昨年度の原稿の改訂版として順次アップします。今年度は昨年度と比較して大きな変更はありません。
それでは、早速講義を始める。
常微分方程式
1章 序論
1.1 微分方程式
工学系の数学において、微分方程式は基本的に重要である。
後に示すが、多くの物理法則は数学的には微分方程式の形に表現されるからである。
それ故、物理法則を理解しようとすれば、その微分方程式を解く必要が生じる。
また物理的もしくは数理科学における現象を微分方程式としてモデル化することも大切である。
そのためにも微分方程式の持つ意味と、その解法を学ぶことは重要である。
この講義では、求積法で解ける微分方程式の解法や線形方程式の解法や
その基礎的な性質を学ぶ。 物理現象との関連も、講義中に幾つか注意をしたい。
微分方程式は、なにか?
これを一応定義すると、こうなる。 変数 x を独立変数とする関数 y = f(x) に対して、
y およびその導関数 y' = y(1) = dy/dx, y'' = y(2) = d2y/dx2 , ・・・ , y(n) = dny/dxn を含む関係式
(1.1) F(x, y, y(1) , ・・・, y(n) ) = 0
を微分方程式という。 この方程式をみたす関数 y = f(x) を微分方程式 (1.1) の解 という。
具体例を与えてみよう。
微分方程式に含まれる導関数のうちで、その階数の最も高いものが n であるとき、
この微分方程式を n 階の微分方程式 という。
一般に n 個の任意定数 C1, ・・・ , Cn を含んだ関数 y = f(x, C1, ・・・ , Cn ) を n 階まで微分しよう。
(1.2) y = f(x, C1, ・・・ , Cn ),
y(1) = f(1) (x, C1, ・・・ , Cn ),
・・・
y(n) = f(n) (x, C1, ・・・ , Cn )
これら n 個の式から(うまくいけば)定数 C1, ・・・ , Cn を消去して、 (1.1)の関係式が得られる。
また、逆に n 階の微分方程式
(1.1) F(x, y, y(1) , ・・・, y(n) ) = 0
に対し、n 個のの任意定数 C1, ・・・ , Cn を含む 解 y = f(x, C1, ・・・ , Cn ) を
(1.1)の一般解という。
さらにこの任意定数に具体的な値を代入して得られる解を特殊解という。
一般解として表現できない解が存在するとき、このような解を特異解という。
微分方程式が、未知変数 およびその導関数 について一次式であるとき、
微分方程式は線形であるという。 そうでないときは、非線形と言う。
例1では、(4)を除き (1)、(2)、(3)全て線形である。
(1)、 (2) は1階線形、(3)は2階線形である。
一般に n 階線形方程式は、つぎの形に書ける。
(1.3) an(x)y(n) + an-1(x)y(n-1) + ・・・ + a1(x)y(1) + a0(x)y = f(x)
いままでは、未知変数 y が1つの場合であったが、未知変数を2つ以上含む
微分方程式も考えることができる。
例を示そう。
例1や例2においては、独立変数が x のみの関数に対する微分方程式であった。
つぎの例3では、独立変数が x と y の2つである場合、
従って偏微分を含む微分方程式である。
このような2つ以上の独立変数をもつ微分方程式を偏微分方程式という。
区別をするために、(1.1)の形の1独立変数の微分方程式を常微分方程式とよぶ。
例3の方程式は、全て線形の偏微分方程式であるが、 u = u(x,y) についての
モンジュ・アンペールの方程式
は、非線形偏微分方程式である。
常微分方程式論においては、
(1.3) y' = f(x,y), y(x0) = y0
のような問題を、初期値問題またはコーシー問題という。
これは、 "初期条件 y(x0) = y0 をみたす微分方程式 y' = f(x,y) の解を求めよ"
という問題である。
また2階の微分方程式に対して、つぎの形の境界値問題も応用上しばしば現れる。
(1.4) y'' = f(x,y, y'), y(a) = 0, y(b) = 0 (a < b)
これは、 " x = a のとき y(a) = 0, x = b のとき y(b) = 0 をみたす
微分方程式 y'' = f(x,y, y') の解を求めよ"
という問題である。端点 a, b で値を指定するので、境界値問題とよばれる。
1.2 1階微分方程式の幾何学的な意味
正規形の、一階微分方程式
(2.1) y' = f(x,y)
を (x,y) 平面上で考えよう。 y' は、(x,y) 平面での y = y(x) の勾配、
すなわち x における接線の傾きであるから、
(2.1)はその勾配が場所 (x,y) の関数 f(x,y) となることを言っている。
微分方程式 y' =y について、各格子点上でそのような勾配を赤の矢印で示してみる。
このような場のことを方向場という。
格子点を無限に沢山選んでいくと、微分方程式の解の概形が浮かびあがる。
この例では、 y = C exp(x) なることが見て取れる。
一般に f(x,y) は、(x,y) 平面上の領域 D で与えられているとする。
"このとき D内の点 P0(x0,y0) を通る解曲線 y = y(x) があったとして、
この点のおける接線の傾き y '(x0) が f(x0,y0) に等しい。"
このことが、"全てのD内の点に対して成り立つ" というのが、 (2.1)の意味である。
つぎにコーシーの折れ線について説明をしよう。
D内の点 P0(x0,y0) を1つ固定する。 h を充分小さな正数とする。
このとき、P1(x1,y1) を
x1 = x0 + h, y1 = y0 + hf(x0,y0)
つぎに点 P2(x2,y2) を
x2 = x1 + h = x0 + 2h, y2 = y1 + hf(x1,y1)
により定める。 以下帰納的に Pk(xk,yk) を
xk = xk-1 + h = x0 + kh, yk = yk-1 + hf(xk-1,yk-1)
により定義する。
点 P0, P1, ・・・・, Pn を結んだ折れ線のことを、コーシーの折れ線 という。
作り方から、このコーシーの折れ線 は、(2.1)の初期条件 y(x0) = y0
の下での近次解と考えられる。
実際、f(x,y) がD で滑らかな場合には、コーシーの折れ線は、
(2.1)の解に収束することが証明される。
0 件のコメント:
コメントを投稿