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2018年6月18日月曜日

微分方程式講義 (2018年版)XII

微分方程式講義の12回目は5章からである。今回は時間がとれず手書き部分のTex化は出来ず前年度原稿の微小な変更に留まった。ご容赦願う。


第5章 連立微分方程式の初期値問題


5.1 初期値問題の解の存在と一意性

この節では、連立方程式系に対する解の存在一意性を論ずる。

考える微分方程式は、 非線形の 連立微分方等式 

(5.1)               y1' =  f1 (x, y1 , y2 ,   ・・・ , yn )

 
                        y2' =  f2 (x, y1 , y2 ,   ・・・ , yn )
                                      ・・・           ・・・
           ・・・  ・・・
                        yn' =  fn (x, y1 , y2 ,   ・・・ , yn )

である。  ここで、 f (x, y1 , y2 ,   ・・・ , yn ) (j =1, ・・・ , n)    は、

n+1 変数の関数である。

連立方程式 (5.1) に対する初期条件を 

(5.2)      y1(a) = b1 ,  y2(a) = b2 ,  ・・・ , yn (a) = bn 
 

とする。 初期値問題 (5.1), (5.2)   のベクトル表示を与えよう。 

y(y1y2,  ・・・ , yn )t  とし、 ベクトル y のノルム(長さ)を 

   || y || = √(y1² + y2²  + ・・・ +  yn² )


と定める。 b(b1b2,  ・・・ , bn )t  とし ベクトル値関数  f(x,y)

 f(x,y)  =  (f1 (x, y1 ,y2 ,   ・・・ , yn ),  f2 ((x, y1 ,y2 ,   ・・・ , yn ),

              ・・・ ・・・ , fn(x, y1 ,y2 ,   ・・・ , yn ) )t  


 とおく。 このとき、初期値問題 (5.1), (5.2)  は、

 (5.3)               y' f(x,y),    y(a) = b  


 と書くことが出来る。 ここで、 y'(y1',  y2',  ・・・ , yn')t  である。  

 (5.3) に関して  閉領域 D 

             D = {(x, y) : |x-a| ≦ r,  ||y - b || ≦ ρ}

により定義する。 f(x,y) は、上で連続と仮定する。 

このとき、 ある定数 M>0 が存在して


(5.4)                   || f(x,y) || ≦ M ,         (x,y) ∈

がいえる。 さらに、次のリプシッツ条件を与える。

(5.5)    ∃ L>0;    || f(x,y) - f(x,z)  || ≦ L|| y - z ||,     (x,y),  (x,z) ∈ D

さて、 y が 初期値問題 (5.1), (5.2)  、解であることと、 y 積分方程式

(5.6)               y(x) =  b +  [a,x] f(t,y(t)) dt ,    |x-a| ≦ r  


の解であるとは、同値であることを注意しておく。 単に積分をすればよいからである。

リプシッツ条件  (5.5) のもとで、初期値問題  (5.3) 解の存在一意性の定理

証明することができる。 


ルドルフ・リプシッツ (1832年5月14日-1903年10月7日)

ドイツの数学者。偏微分方程式論および数論において多くの業績を残した。


その前に、 リプシッツ条件  (5.5) がなければ、解の一意性は保証されない事を反例に

より示そう。 同時に無数の解が存在し得ることも示す。



この節の目的は、ピカールの逐次近似法 を用いて解の存在一意性の定理を証明すること

である。


エミール・ピカール(1856年7月24日 - 1941年12月11日)

フランスの数学者。パリ出身。ピカールの定理やピカールの逐次近似法等の証明で知られる。




定理 1  リプシッツ条件  (5.5) の下で、 初期値問題 

 (5.3)               y' f(x,y),    y(a) = b  

の解は、  r' = min { r,  ρ/M } として 区間 [a - r', a + r'] 

上で唯一つ存在する。 ここで M > 0 は (5.4) で与えた定数。


証明を与える前に ピカールの逐次近似法 を説明する。 

これは、 初期値問題 (5.3)  つまり 

積分方程式 (5.6)  の近似解を文字通り逐次的に構成する方法である。 

第0近似を  y0(x) ,   (適当にとればよい)

第1近似を  y1(x) = b +  [a,x] f(t, y0(t)) dt ,

第2近似を  y2(x) = b +  [a,x] f(t, y1(t)) dt ,

 ・・・ ・・・ ,

第n近似を  yn(x) = b +  [a,x] f(t, yn-1(t)) dt , 

により 近似列  { yn(x) }  を作り  yn(x) が x=a  を中心とする適当な閉区間 I 上で 

 y(x) に一様収束すれば その  y(x) は、その作り方から

             y(x) = b +  [a,x] f(t, y(t)) dt


をみたすので、 積分方程式 (5.6)  の解になる。 このような近似の仕方を、

ピカールの逐次近似法 という。


定理1の証明)  y0(x) = b  として、 I = [a - r', a + r']   とおく。 

I 上の 初期値問題(5.3) の逐次近似解  yn(x)  

(5.7)          yn(x) = b +  [a,x] f(t, yn-1(t)) dt ,   x ∈  I = [a - r', a + r']    

とおく。 まづ、定義された区間 [a - r, a + r]  を I に制限する事により、 

yn(x)  定義 (5.7) 有効になることを確かめよう。 

数学的帰納法を使ってこの事を示そう。 yn(x)  が区間

I = [a - r', a + r'] 上で定義されているとする。 つまり、 

(5.8)       || yn(x) - b || ≦  r' = min { r,  ρ/M } ≦ r

とする。 このとき  

(5.9)     || yn+1(x) - b || ≦  ||  [a,x] f(t, yn(t)) dt || ≦ | [a,x] ||f(t, yn(t)) || dt| 

                                            ≦  | [a,x] M dt| = M |x - a | ≦ Mr' ≦ M・ρ/M =  ρ,     x ∈  I

となるから、 yn+1(x)  区間 I = [a - r', a + r'] 上で定義される。 

さて、 リプシッツ条件  (5.5) より
 

 
(5.10)     || yn+1(x) - yn(x)  ||  ≦  ||  [a,x] [f(t, yn(t)) -  f(t, yn-1(t))] dt ||  

 

                    ≦  | [a,x] || f(t, yn(t)) -  f(t, yn-1(t)) || dt |

                                          ≦  | [a,x] L|| yn(t) -  yn-1(t) || dt |  =  L | [a,x] || yn(t) -  yn-1(t) || dt | 

を得る。 n=1 のとき、  

     || y2(x) - y1(x)  || =  || [a,x] [f(t, y1(t)) -  f(t, b)] dt ||   
      
                                        ≦  L | [a,x] [|| f(t, y1(t))|| +  || f(t, b) || ] dt |   L (2M |x-a|)  = LN |x - a |

ここで、 N=2M である。 n=2  として上の不等式を使うと、

          || y3(x) - y2(x)  ||    | [a,x] || f(t, y2(t))-  f(t, y1(t)) ||  dt |   L | [a,x] || y2(t)-  y1(t) ||  dt |

                                        ≦ | [a,x] LN |t - a | dt |   L² N (|x - a |²) /  2!
  
再び不等式 (5. 10) で n=3  として上の不等式を使って積分を計算すると、


  || y4(x) - y3(x)  ||    L | [a,x] || y3(t)-  y2(t))||  dt |

                                 ≦  | [a,x] L² N (|t - a |²) /  2! dt |   L³ N (|x - a |³) /  3!

が得られる。 この事を繰り返すと 
                                     

  (5.11)     || yn+1(x) - yn(x)  ||     Lⁿ N (|x - a |ⁿ) /  n!   Lⁿ N(r')ⁿ /  n!,    x ∈  I

が示される。 これは、 絶対値関数項の級数 


初期値問題 (5.3)  の区間 I 上の2つの解 y(x),  z(x)  があったとする。 このとき、 

リプシッツ条件  (5.5) により 

(5.13)     || y(x) - z(x)  ||  ≦  ||  [a,x] [f(t, y(t)) -  f(t, z(t))] dt ||  

                    ≦  L | [a,x] || y(t) -  z(t) || dt | ,      x ∈  I

もし、 a ≦ x ≦ a + r'   ならば、 (5.13) で 

| [a,x] || y(t) -  z(t) || dt | = [a,x] || y(t) -  z(t) || dt    となるから 2章6節 定理3 の 

グロンウォールの不等式 により、 c = 0,  φ(x)  = L として

(5.14)     || y(x) - z(x)  ||  ≦  0,      x ∈  [a, a+r']  

つまり、  y(x) = z(x),      ∀x ∈  [a, a+r']   となる。

 x ∈  [a-r', a]  の場合にも (5.14) と同様の不等式を(5.13) より導くことができる(確かめよ)。


従って、 y(x) = z(x),   ∀x ∈ I  となり 解の一意性が示された。  (証明終) 
  



カール・テオドル・ヴィルヘルム・ワイエルシュトラス(1815年10月31日 – 1897年2月19日)

ドイツの数学者。解析学の基礎分野で多大の貢献を為した。



解の存在区間

必ずしも解は考えられている区間全体で存在するとは限らない。 

次のような場合が起こりうる。 



この事を具体的な微分方程式で見ていこう。



実は、定理1において、リプシッツ条件  (5.5) は、解の存在のためには不要である。 

つまり、次の コーシー・ペアノの定理 がなりたつ。



定理 2  初期値問題 

 (5.3)               y' f(x,y),    y(a) = b  

の解は、  r' = min { r,  ρ/M } として 区間 [a - r', a + r'] 上で

少なくとも一つ存在する。 


定理2 の証明は、コーシーの折れ線法 を使うが、関数族の一様有界性同程度連続性 

という概念も使うので、 議論が高度になり、本講義では省略する。




ジュゼッペ・ペアノ(1858年8月27日– 1932年4月20日)

イタリアの数学者。トリノ大学教授。自然数の公理系 (ペアノの公理)、ペアノ曲線の考案者として知られる。
  






応用数理C講義 XI

応用数理C講義の10回目では円板領域におけるポアソン方程式を考察する。円板領域での固有値問題を解くことにより固有関数としてベッセル関数が現われる。即ち円板の固有振動はベッセル関数で表示できる。さらにそのベッセル関数列を用いてポアソン方程式の解を級数の形で求める。今回は記号が煩雑なので注意されたい。










2018年6月12日火曜日

ナポリ旅行記 LVI (一応の最終回)

なぜか写真のアップができなくなった。先週からサーバー側で画像送信を拒否してしまうのでどうしようもない。しかし講義原稿の画像はアップできる。それは有難いことでしたが、遊びのナポリ旅行記は書き続けられなくなった。仕方ないので今回で一応の終了とする。毎回それほど大量の画像をアップしているわけではないので全く理由がわからない。サーバーの不調かもしれない。googleには年間の画像保存料は支払っているのにね・・・。

ホテルでの家族最後の朝食。


腰痛もあるし当分ブログ記事は講義原稿以外はお休みしろということかもしれないね。ということで極短だがこれでおしまい。












微分方程式講義 (2018年版)XI

ひきつづき微分方程式講義の11回目である。


4.2 基本解とロンスキアン 



この節では、ロンスキアン  を使って、3章2節と同様の結果が1階の変数係数連立微分方等式 

に対しても成り立つことを示す。 簡単のため、2未知変数の場合を考える。 

つぎの斉次連立微分方程式を考える。


(4.21)              y1' =  a11 (x)y+  a12 (x)y
                         y2' =  a21 (x)y1   +  a22 (x)y2   

ここで、 aij (x)  (i, j =1, 2)  は 区間 I 上の連続関数とする。  


(4.21) のベクトル表示を与えよう。






この事から、 |W(x)|  は 区間 I 上で恒等的に 0 か または決して 0 にならない事

がわかる。
|W(x)| ≠ 0,   x ∈ I  のとき、 つまり W(x) が I 上で正則のとき、 

y1,   y2  は I 上 で独立になる。 このとき、 

W(x) を (4.21) または (4.22) の 基本解  

もしくは、 解の基本形系   という。  

くどいが、 |W(x0)| = 0,   ∃x0 ∈ I  のとき、 y1,   y2  は I上 で一次従属になることを

確かめよう。

このとき、共に 0 でない定数 C1,    C2    をとって、  C1 y1(x0)  +  C2  y2(x0)  = 0   

とできる。 

 今  y = C1 y1  +  C2  y2   とおくと 、 y' = A(x)y   かつ  y(x0) = 0  より、

初期値問題の解の一意性(次章で説明)から y(x) = 0,   ∀x∈I となり、  

C1 y1  +  C2  y2  0  がいえるので  y1,   y2  は一次従属。 


さて、 y1,   y2 を (4.22) の基本解とする。 

(存在については、|W(x0)| ≠ 0,   ∃x0 ∈ I なるものを選べばよい) 
 

さらに y を (4.22) の勝手な解とする。  このとき |W(x)|  ≠ 0,  x ∈ I  であるから、

行列式論の クラーメルの公式 により I 上の関数 c₁(x),   c₂(x) で、
 

(4.24)         c₁(x) y₁+   c₂(x) y =  y      

  
となるものが存在する。 c₁(x),   c₂(x) が微分可能なことは、明らかだろう。

 
 (4.24)  を微分して (4.22) を使うと、

(4.25)      A(x) y = y' =   c₁(x) y' +   c₂(x) y' +  c₁'(x) y₁+   c₂'(x) y

                            =   c₁(x) A(x)y₁ +   c₂(x)A(x) y₂ +  c₁'(x) y₁+   c₂'(x) y

                            =  A(x)( c₁(x) y₁ +   c₂(x) y₂)  +  c₁'(x) y₁ +   c₂'(x) y

                            =  A(x) +  c₁'(x) y₁ +   c₂'(x) y

よって

 (4.26)       c₁'(x) y₁ +   c₂'(x) y₂= 0      

がしたがう。 ここで、 y1,   y2  は一次独立であったから、 

                  c₁'(x)  ≡ 0,   c₂'(x)  ≡ 0    

となり、 c₁(x) = C1,   c₂= C2,   (  C1,   C2 は定数) となる。 すなわち、

(4.27)         y  = C1 y₁+   C2 y     

と書ける。 すなわち、次の定理がなりたつ。



定数変化公式

 
 次にロンスキアン W(x) = W[y1,   y2 ](x)  を用いて 非斉次方程式

(4.28)      y' =  A(x) y + f (x),        f (x) = (f1(x), f2(x))t
      
    

の一般解を定数変化法を用いて 3章2節と同様にして求めよう。

(4.29)              y   =  c₁(x) y₁+   c₂(x) y     

の形で (4.28) の解を求めよう。 (4.29)  を微分して (4.28) を使うと、先と同様の計算により

      y'  =   c₁(x) y' +   c₂(x) y' +  c₁'(x) y₁ +   c₂'(x) y

        =   c₁(x) A(x)y₁ +   c₂(x) A(x)y₂ +  c₁'(x) y₁ +   c₂'(x) y

        =  A(x) +  c₁'(x) y₁ +   c₂'(x) y

         =  A(x)f (x)

 となり、最後の2式より  

(4.30)         c₁'(x) y₁ +    c₂'(x) y₂ =  f (x)

 がしたがう。 よって クラメールの公式により







 



4.3 高階の微分方程式と連立微分方程式 


ここでは、単独の n階微分方程式を連立微分方程式に直すことを考える。

(4.31)        y(n) + a1(x)y(n-1) + ・・・ + an(x)y  = f(x)

に対し

(4.32)         y1 = y,   y2 = y(1),   ・・・・ ,  yn = y(n-1)

とおくと、 y = (y1,   y2,   ・・・・ ,  yn )t     に対するベクトル微分方程式



一般に、 A(x) を n×n  行列関数として、 n未知変数の連立微分方程式

(4.34)     y' = A(x)y  + f(x)

を考えよう。 (4.34)   の斉次形 y' = A(x)y   の n個の解 

y1   y2 ,   ・・・・ ,  yn  に対し 

(4.34) の ロンスキアン W(x) = W[ y1   y2 ,   ・・・・ ,  yn](x)  を 

行列式 |(y1  y2,   ・・・・ ,  yn )|  により定義する。 

この定義の下で、 (4.32) より (4.31) に対するロンスキアン と 

(4.33) に対するロンスキアン一致することがわかる。

このように、連立一次微分方程式を考察することは、

高階の微分方程式を考察することにつながる。