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2014年4月9日水曜日

微分方程式講義 II

ノート 2-23 の解答は間違ってましたので、正しいものと差し替えました。


2.4 完全微分方程式

 

微分形の方程式

(2.9)    P(x,y)dx + Q(x,y)dy = 0

において、 


(2.10)    P(x,y) = ∂F(x,y)/∂x,       Q(x,y) = ∂F(x,y)/∂y      

となる F(x,y)  が存在するとき、(2.9)   完全微分方程式 という。 

このとき、 (2.9)  は 全微分 dF(x,y)  を用いて

(2.11)    dF(x,y) = [∂F(x,y)/∂x] dx + [∂F(x,y)/∂y]dy = 0

とかける。 したがって、  (2.10) をみたすとき、 (2.9) の解は、 

 (2.12)    F(x,y) = C   (C は、積分定数)   

とかける。  特に F が C²級 とすると 

      ∂P(x,y)/∂y = ∂²F(x,y)/∂y∂x =  ∂²F(x,y)/∂x∂y = ∂Q(x,y)/∂x

つまり

(2.13)    ∂P(x,y)/∂y  =  ∂Q(x,y)/∂x       

がなりたつ。 実は、逆がいえる。

定理 1 P(x,y),  Q(x,y)  は、 C¹級 とする。


 (2.9)    P(x,y)dx + Q(x,y)dy = 0
 

が 完全形 であるための 必要かつ十分条件は、
   
 (2.13)    ∂P(x,y)/∂y  =  ∂Q(x,y)/∂x       

である。

(証明) (2.9)  完全形なるとき、 (2.13) が成り立つことはすでに示した。 

ぎゃくを示そう。 今  F(x,y) = P(x,y)dx + R(y)  ととり、  R(y) をうまく取れば

dF(x,y) = 0  なることを示すとよい。 ∂F(x,y)/∂x = P(x)   なので 

   ∂F(x,y)/∂y =  (∂/∂y)P(x,y)dx + R'(y) = Q(x,y) 

となるように R(y)  を決めるとよい。  ところで (2.13) より

     (∂/∂x)[Q(x,y)  - (∂/∂y)P(x,y)dx ] Q(x,y)/∂x - (∂²/∂x∂y) P(x,y)dx
                                
       =    ∂Q(x,y)/∂x -  (∂/∂y)(∂/∂x)  P(x,y)dx  =   ∂Q(x,y)/∂x -  ∂P(x,y)/∂y  = 0        

となり、 Q(x,y)  - (∂/∂y)P(x,y)dx は x に無関係、 つまり y だけの関数になる。 

 よって   R'(y) = Q(x,y) - (∂/∂y)P(x,y)dx  より この式を y で積分して

             R(y) = ∫[Q(x,y) - (∂/∂y)P(x,y)dx ]dy

とすればよい。 実際

dF(x,y) = [∂F(x,y)/∂x]dx + [∂F(x,y)/∂y]dy 
              
     = P(x,y)dx + [R'(y) + (∂/∂y)P(x,y)dx] dy  

             =  P(x,y)dx + [Q(x,y)  - (∂/∂y)P(x,y)dx + (∂/∂y)P(x,y)dx] dy  

             =  P(x,y)dx + Q(x,y) dy 

がなりたつからである。  例をあげる。




積分因子

一般に、微分方程式 (2.9) は完全ではない。 条件 (2.13) を満たさないものは多数ある。

しかし、ある関数 M(x,y) を (2.9)の両辺にかけると、完全になる場合がある。 つまり

(2.14)    M(x,y)P(x,y)dx + M(x,y)Q(x,y)dy = 0
 

が 完全形 になるとき、 このような関数  M(x,y) のことを、積分因子  という。

従って、このとき

(2.15)   (∂/∂y)(M(x,y)P(x,y))  =   (∂/∂x)(M(x,y)Q(x,y))

がなりたつ。 すなわち M(x,y) は

(2.16)   P(∂M/∂y)- Q (∂M/∂x) = M((∂Q/∂x)- (∂P/∂y)) 

をみたすことが必要十分である。 (2.17) は M について1階偏微分方程式で、 

これを解くことは、一般に容易ではない。 しかし特殊な場合には、M を求めることは可能である。

非常に都合のいい条件設定だが、M が x のみの関数となったとする。 

このとき、(2.16)  の左辺第1項は消えるので、さらに都合のよい仮定だが

 
(Qx- Py)/Q が x のみの関数であれば 変数分離形として積分因子 M  が求まる。

その他の場合も考えられる。 ここでは、この場合も含め3つの特殊な場合を考える。

(i)  (Qx- Py)/Q が x のみの関数の場合

M(x,y)=M(x)  と考えることができる。 このとき、(2.16) より

dM/dx = [1/Q](Py - Qx) M  

となり    M(x) = exp ( (Py - Qx)/Q dx)  が積分因子となる。


(ii)  (Qx- Py)/Q が y のみの関数の場合

M(x,y)=M(y)  と考えることができる。 このとき、(2.16) より

dM/dy = [1/P](Qx- Py) M  

となり    M(y) = exp ( (Qx- Py)/P dx)  が積分因子となる。

(iii)  P(x,y),   Q(x,y)   が同次式の場合、 つまり

P(λx, λy) = λn P(x, y),    Q(λx, λy) = λn Q(x, y)      の場合。

 このとき、

 M(x,y) = 1/ (xP(x,y) + yQ(x,y))   は、積分因子になる。  

これを確かめる。  

ここで、例を2つあげよう。



2.5 その他の微分方程式

この節では、求積法 により解くことのできる方程式を挙げよう。
 

 

1.ベルヌーイ型微分方程式


(2.17)    y' + a(x)y  + b(x)yⁿ = 0     

を考える。 このような y についての 2次式を含む非線形微分方程式を 

ベルヌーイ型微分方程式 という。 n=0    または n=1 のとき、(2.17)  は1階線形方程式になる。 

(2.17)  は線形でないが、置き換えによって線形に直せる。

u = y1-n    とおくと、 u' = (1-n)y-n      となる。 ここで uyⁿ = y  に注意する。 

したがって、(2.17) は、

           u'yⁿ   /(1-n)  +  a(x)u yⁿ +  b(x)yⁿ = 0    

すなわち  

 (2.18)    u' + (1-n) a(x)y  = - (1-n) b(x)     

となる。 これは、1階線形微分方程式なので 2.3節の方法により解ける。

 
最後に n は、任意の正数でも差し支えないことを注意しておく。
 
 

2. リッカチ型方程式


y について2次の非線形方程式

(2.19)    y' = a(x) + b(x)y + c(x)y²      


を考える。 この形の方程式を  リッカチ型方程式 という。

一般には、この方程式は求積法により解けない。 

しかし、(2.19) の一つの解が求まれば  求積法により解くことができる。 

y = y₀(x) を (2.19) の一つの解とする。 u = y - y₀   とおく。  y' = u' + y₀'  なので 代入して

       u' + y₀' = a(x) + b(x) u + b(x)y₀ + c(x)y₀² + 2c(x)u y₀ + c(x)u²  

整理すると、

                   u'  = (b(x) + 2c(x) y₀)u + c(x)u²  + (y₀' + b(x)y₀ + c(x)y₀²)  

この式の最後の項は、0  なので


(2.20)     u'  = (b(x) + 2c(x) y₀)u + c(x)u² 


 
 
となり、 これは n=2 の場合の ベルヌーイ型微分方程式となる。

さらに v=1/u  とおくと u'= -v'/v² なので (2.20)   代入すると

                -v'/v²  = (b(x) + 2c(x) y₀)[1/v] + c(x)[1/v²] 

となり -v²倍して方程式

         v'  = -(b(x) + 2c(x) y₀) v - c(x) 


が得られる。 これは、v についての1階線形方程式なので

これを解いて (2.19) の解が得られる。 


3. クレロー型方程式


(2.21)     y  =  xy' + f(y') 

の形の方程式を クレロー型方程式  という。 ただし f は C¹級とする。  

(2.21)  を x で微分して  y' = xy'' + y' + f(y')y'' つまり

                  y''(x+ f(y')) = 0

これから

(i)  y''=0    の場合 

y'' = 0   ⇒ y' = C  ⇒ y = Cx + D

ところで、 (2.21) より D = f(C) となるから

        y = Cx + f(C)    (C: 任意定数) が解。

(ii)  x+ f(y') =0    の場合 

このとき y' = p をパラメータとすると (2.21) と連立して

(2.22)     x = - f '(p),   y  =  -p f '(p) + f(p) 

がえられる。  この p をパラメータとする 曲線 (x(p), y(p)) は (2.21) の解であるが

(i) の解の任意定数 C をどのように選んでもこの解は得られない。 この意味で この曲線を

(2.21) の 特異解 という。 

実は、(i) の直線群の包絡線が (2.22) で与えられる。 

 

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