(3章 3節のつづき)
システムに対する記号解析
これまでに述べてきた演算子を用いる 記号解析 は、連立微分方程式系に対しても有効である。
簡単のため、以下では 2未知変数 y, z の 定係数連立微分方程式系 を考える。
(3.18) P1(D) y + P2(D)z = f(x), P3(D) y + P4(D)z = g(x)
(3.18) の第1式に 演算子 P4(D) をほどこし、さらに 第2式に 演算子 P2(D) をほどこし、
それらの差をとると
{P1(D)P4(D) - P2(D)P3(D)}y = P4(D)f(x) - P2(D)g(x)
同様にして
{P1(D)P4(D) - P2(D)P3(D)}z = P1(D)g(x) - P3(D)f(x)
が得られる。 これより、
(3.19) y = [1/{P1(D)P4(D) - P2(D)P3(D)}] (P4(D)f(x) - P2(D)g(x)),
z = [1/{P1(D)P4(D) - P2(D)P3(D)}] (P1(D)g(x) - P3(D)f(x))
を得るが、 これらは微分の階数に対応する任意積分定数をもつため、
(3.18) の一般解を与えているわけではない。 この事は、後の例で示す。
行列式を使ってこのことを表現しよう。
これから、 y, z を求めて 実際にもとの方程式系 (3.18) をみたすべく決めればよい。
2つの例を与える。
3.4 定係数 n 階線形微分方等式
この節では、前節までの結果を用いて 定係数 n 階線形微分方等式 の解の公式を与える。
(3.20) y(n) + a1y(n-1) + ・・・ + any = f(x)
とその斉次形
(3.21) y(n) + a1y(n-1) + ・・・ + any = 0
を考える。 ここで、 a1, ・・・, an は、定数とする。
すぐに確かめられるが、 非斉次方程式 (3.20) の一般解は、 斉次方程式 (3.21) の一般解と
(3.20) の一つの解(特殊解)との和で与えられる。 したがって (3.21) の一般解を求める
ことが重要になる。 (3.21) の解を y = exp(λx) の形で求めよう。 代入すると、
λn exp(λx) + a1 λn-1 exp(λx) + ・・・ + an λ exp(λx) = 0 なので、exp(λx) でわると
(3.22) λn + a1 λn-1 + ・・・ + an λ = 0
が得られる。 この n次方程式が、次のように因数分解されるとする。
非斉次方程式 (3.20) の1つの解は、 前節の定理11により計算すればよい。
最後に未定係数法についてのべよう。 簡単のため、2階方程式で説明する。
(3.1) y'' + ay' + by = f(x)
の特殊解を求める簡便な方法である。 特性方程式
(3.3) λ² + aλ + b = 0
の根を λ1 , λ2 とおく。
(I) f(x) = A(x)exp(mx); A(x) は多項式、 m は実数 とする。
(i) m が (3.3) の根でない場合、 つまり m ≠ λ1 , m ≠ λ2 のとき、
y = C(x)exp(mx); C(x) の次数 = A(x) の次数
として (3.1) に代入して 恒等式の関係から C(x) の係数を決定する。
(ii) m が (3.3) の単根の時、 つまり m = λ1 , λ1 ≠ λ2 のとき、
y = xC(x)exp(mx); C(x) の次数 = A(x) の次数
として (3.1) に代入して 恒等式の関係から C(x) の係数を決定する。
(iii) m が (3.3) の重根の時、 つまり m = λ1 , λ1 = λ2 のとき、
y = x²C(x)exp(mx); C(x) の次数 = A(x) の次数
として (3.1) に代入して 恒等式の関係から C(x) の係数を決定する。
(II) f(x) = (A(x)cos kx + B(x)sin kx)exp(mx); A(x), B(x) は多項式、m は実数 とする。
(i) m+ki が (3.3) の根でない場合、 つまり m+ki ≠ λ1 , m+ki ≠ λ2 のとき、
y = (C(x)cos kx + D(x)sin kx)exp(mx);
C(x), D(x) の次数 = Max {A(x) の次数, B(x) の次数}
として (3.1) に代入して 恒等式の関係から C(x), D(x) の係数を決定する。
(ii) m+ki が (3.3) の単根の時、 つまり m+ki = λ1 , λ1 ≠ λ2 のとき、
y = x(C(x)cos kx + D(x)sin kx)exp(mx);
C(x), D(x) の次数 = Max {A(x) の次数, B(x) の次数}
として (3.1) に代入して 恒等式の関係から C(x), D(x) の係数を決定する。
(iii) m+ki が (3.3) の重根の時、 つまり m+ki = λ1 , λ1 = λ2 のとき、
y = x²(C(x)cos kx + D(x)sin kx)exp(mx);
C(x), D(x) の次数 = Max {A(x) の次数, B(x) の次数}
として (3.1) に代入して 恒等式の関係から C(x), D(x) の係数を決定する。
f(x) が (I) の形の関数と (II) の形の関数の和であれば、それぞれの特殊解を
未定係数法で求めそれらの和を取ればよい。
例を与えよう。
ここで、述べた特殊解を求める未定係数法 は、高階の定係数方程式に対しても同様に
適用できる。 特性方程式の根の重複度に応じて x のべきをかけた形で求めると良い。
最後に、3階の方程式の例をあげる。
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