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2016年6月14日火曜日

微分方程式講義(2016年版)IX

予定通りには講義は進まないものである。9回目の講義は前回 (2016年版) VIII で述べた定係数 n 階線形微分方等式の一般解の表示と未定係数法の説明から始める。

遅れついでと言っては何だが、昨年度も簡単に説明した1つの重要な補足を加える。このタイフの方程式はラプラシアンを極座標分解したときに現れる変数係数の2階方程式の1つである。


3.5 オイラー - コーシーの 微分方等式 


この節では、 教科書では述べられてないが、求積法によって解くことのできる変数係数

2階線形方程式の例として オイラー - コーシー型 の方程式をあげよう。 



レオンハルト・オイラー(Leonhard Euler, 1707年4月15日 - 1783年9月18日)

18世紀の数学者であり、天文学者(天体物理学者)である。18世紀の数学の中心となって、続く19世紀の厳密化・抽象化時代の礎を築いたとされる。


オーギュスタン=ルイ・コーシー(Augustin Louis Cauchy, 1789年8月21日 - 1857年5月23日)

フランスの数学者。解析学の分野に対する多大な貢献から「フランスのガウス」と呼ばれることもある。天文学、光学、流体力学などへの貢献も多い。


オイラー - コーシー型の方程式は、一般のn階方程式に議論を拡張できるが、

ここでは簡単のため n=2 として説明しよう。  a,  b を定数として2階の変数係数方程式

(3.23)    x²y'' + axy' + by  = 0 

オイラー - コーシーの 微分方等式 という 。 以下変数 x > 0 とする。

この微分方程式の解は、べき関数を一般解としてもつことが知られている。 y = x     とおいて

(3.23)  に代入すると、

                   x²m(m-1)xm-2  + axmxm-1 + bx   =  xm  {m(m-1) + am + b} = 0  

このことより m は2次方程式

 (3.24)     m(m-1) + am + b = 0

の根となるように取ればよい。  (3.24)  を (3.23) の特性方程式 という。

 (3.24) は、2根 m₁, m₂ をもつからそれらに対応する解が 基本解 になる。 

 (3.24) の判別式 D = (a-1)² - 4b  とする。



定理 11 (i)  D > 0 のとき、  (3.24) の相違な2実根を α , β とおくと、 

微分方程式 (3.23) の一般解は、

  (3.25)                   y = C₁xα  + C₂xβ 

で与えられる。

  
 (ii)  D = 0 のとき、  (3.24) の重根を α とおくと、 

微分方程式 (3.23) の一般解は、

  (3.26)                  y =  (C₁+ C₂log x) xα 

で与えられる。

 (iii)  D < 0 のとき、  (3.24) の相違な2虚根を α ± βi  とおくと、 

微分方程式 (3.23) の一般解は、

 (3.27)                y = xα  [C₁cos (β log x) +  C₂sin (β log x ) ] 

で与えられる。


 (証明) (i)   y₁= xα  と  y₂= xβ  が解になることは、確かめた。

 y₁と y₂の一次独立性を示すために、ロンスキアンを計算しよう。 すぐに


W[xα , xβ ] = (β - α)xα+β-1   がわかるので、α ≠ β  よりロンスキアンは恒等的に 0 でない。

したがって xα  と  xβ  は一次独立になり、 (3.23) の一般解は (3.25) で与えられる。


(ii)   y₁=xα  が解になることは明らか。 xm を方程式に代入して計算すると

                           x²(x )'' + ax (xm )' + b x   =    {m(m-1) + am + b} xm   

が得られる。 したがってこの式を m で微分すると   xm  = exp(m log x)  より 

dx/dm =  log x exp(m log x) =  x log x に注意すれば                 

     x²(x log x)'' + ax (x log x)'  + b x log x = (m - α) {2 + (m - α)log x}xm  

となり、  m = α を代入すると、 (xα log x)'' + ax (xα  log x)'  + b xα  log x = 0


つまり、 xα  log x も (3.23) の解。 xα  と xα  log x の一次独立性の証明は 

定理2の証明と同様である。 

したがって、この場合の一般解は、(3.26) で与えられる。


 (iii)  複素根を持つ場合、

 y₁ =  xα+βi ,  y₂= xα-βi が2つの一次独立な解になる。  xβi  = exp(i β log x)  なので

 オイラーの公式    exp(iβ log x ) = cos (β log x) + i sin (β log x)    をつかうと、

y₁ =  xα+βi  = xα xβi   =  xα  [cos (β log x) + i sin (β log x ) ] ,

y₂ =    xα-βi   = xα x-βi   =  xα  [cos (β log x) - i sin (β log x ) ] , 

とかける。 したがって、 y₁と y₂の線形結合

(y₁+ y₂)/2 = xα  cos (β log x) ,      (y₁- y₂)/2 i =  xα  sin (β log x)     を考えると

結論にある2つの一次独立な解が得られる。 一次独立性の証明は定理2と同様にしてできる。

 例をあげよう。 


つぎに非斉次方程式を考える。

定数変化法により、定理7と同様にして次の定理をうる。 証明は演習問題とする。


定理 12  斉次方程式 (3.23)  の基本解系を y₁, y₂ とする。 

のとき非斉次方程式

(3.28)    x²y'' + axy' + by  = f(x) 

 
 の一般解は、 

(3.29)     y =  y₁( - y₂f(x) / x²W[y₁, y₂] dx + C₁) 

              + y₂( y₁f(x) /x² W[y₁, y₂] dx + C₂) 

 で与えられる。 

 最後に例を1つ与える。


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