ページビューの合計

2015年1月23日金曜日

百年の孤独ーー101歳のアマチュア画家・江上茂雄

前回101歳で亡くなられた、画家グランマ・モーゼスの紹介をしたが、日本にも101歳で現役であったアマチュア画家がいる。江上茂雄さんです。今回は、この画家の紹介をしたい。

私の親父より少し上の世代で、実に苦労をされている。戦争の時代については、特に何も書かれてはいないが、その時代をくぐり抜けご子息を立派に育てられている。彼らは、建築家や画家になっておられる。 息子たちが語る、画家 江上茂雄


まだ存命しておられると思っていたが、記事を書くために検索してみると、昨年2月26日に101歳でお亡くなりになっていることが分かった。

西日本新聞の記事より。 

26日午前9時14分、老衰のため福岡市東区の老人ホームで死去、101歳。福岡県みやま市出身。15歳から福岡県大牟田市の三井三池鉱業所に勤め、パステルクレヨンなどで身近な風景を描いた。定年退職後、熊本県荒尾市に住み、67歳から30年間ほぼ毎日野外でスケッチを続けた写生画は約1万点を数えた。昨年9〜12月に福岡県立美術館など3館で回顧展が開かれた。

この画家について、写真家・編集者として著名な都築響一さんが、ご自身のメールマガジン「ROADSIDERS' weekly」(2013/10/02号 vol.085)で、江上茂雄さんを紹介する記事を書いている。 


百年の孤独
 ――101歳の現役アマチュア画家・江上茂雄の画業

江上茂雄さんは熊本県荒尾市に住む、なんと101歳の現役画家、それもアマチュア画家だ。荒尾に隣接する大牟田市と、田川市で小さな展覧会が開かれていて、さらに10月からは福岡県立美術館で、アマチュア画家には異例の大規模な個展が開かれるという。・・・・・

2013年秋、福岡県内3つのミュージアム(田川市美術館9/3-9/16、三池カルタ・歴史資料館10/1-12/8、福岡県立美術館10/5-11/10)で画家 江上茂雄の回顧展が開催された。

特に、

『江上茂雄 風ノ影、絵ノ奥ノ光』 @福岡県立美術館
10月5日~11月10日
http://fukuoka-kenbi.jp/

でこの美術館のスタッフの方が、都築響一さんの記事を用いて、この101歳の画家を紹介している。 江上茂雄展 この記事をベースにして、江上茂雄の画業をみていこう。

江上茂雄作品集』の序文で、江上さんは自らの絵暦をこのように語っている。


私の絵暦

母はある店先に入った。背中にくくりつけられていた私は店先の飾棚の絵を見た。
それはミレーの「晩鐘」だった。これが私と絵との初めての出会いだった。

学童の図画教程はいわゆる写生の時代。写生といっても、目の前の物をよく見てしっかりその生命感を写しとるという、物のリアルから心のワビサビまでの厳しい長い道だった。ぼんやり者の私もその写生から始まった。

母子家庭で昭和二年高等小学校卒業後、三井三池鉱業建築課就職、昭和四七年退職までの四五年間が私の日曜画家の時代だった。実生活者としては私一人の給料で七人家族を養った。

その後、退職から今日までの三八年間は「路傍の画家と言われた。昭和五四年病気入院二ヵ月、退院後、本格的に水彩に変わる。



それまではクレヨン、クレパスをおもに使ってたんですが、脳血栓で入院してから(1979年、67歳)、水彩に切り替えました。


クレヨンやクレパスは、力がいるんです。滑べらせるだけじゃあ線はつくけれど、色はつかないから。水彩は力がいらないからね。


67歳から30年間ほぼ毎日野外でスケッチを続けた。 その写生画は約1万点を超えている。

いまはもうなかなか外にも出れないですから、家で木版をやってます。むかし水彩で描いた風景を、木版にする。それなら家でできますから。



もう眼も、手足もよく動かなくなったけど、それでも毎日、絵をやってないと寂しい、情けない気持ちになって、落ち込むんです。
絵を描いておれば飽きることがないし。
それで毎日、これが最後の作品になるかもしれないと思いながら、つくってるんです。

絵を描くことが即生きることになっている。このような生き方こそが、人間にとっての最高のものだ。 

自宅での製作道具。絵筆、絵皿、・・・・



お母さんの使っていた赤い箪笥。



 都築響一さんの評論です。彼の画風や画業を適切に表現されています。

作品を見ればわかるように、江上茂雄さんの絵は年代によって画風を少しずつ変化させながらも、ある意味で絵画の王道を歩んできた。けっしてアウトサイダー・アートではない。絵の先生もいなければ、高級な画材も使えないという厳しい環境の中で、東京から送られてくる美術雑誌などで学ぶ美術界の動向を貪欲に吸収し、自分なりに消化して作品に仕上げてきた。退職後のわずかな個展の機会を除けば、だれに見せようとも、だれの評価も受けようともしないまま


このように、画集や美術雑誌も沢山棚に並んでいる。



さいごに彼の作品を製作年度に関係なくあげていく。気に入ったのは画像を大きくしてある。
 







 
 

 
 



 



 

 
 
今回は、これでおしまい。
 
 

0 件のコメント:

コメントを投稿