ガロに掲載されていた彼の作品はよく読んでいたし、貸本専門の単行本でも読んだ覚えがある。
私の記憶にあるのは、こんな絵柄の漫画です。社会の底辺で生きる人々を主人公とした陰鬱な短編作品ですね。自己投影して読んでおりました。
日の丸文庫の貸し本漫画単行本「影」では、ハードボイルド漫画も描いていた。
これも読んだ記憶がかすかにある。はっきりと読んだと記憶している作品は、『地獄の軍団』である。題名どころか細部もすっかり忘却の彼方であったが、ドブネズミに育てられていた男の復讐譚である。
その漫画のタイトルなどは、全く忘れていたのだが、検索してみるとわかるものですね。マンサンコミックスなので、30代のころ喫茶店に通っていて毎週読んでいた漫画サンデーに連載されていたのかもしれない。
ストーリーは、このようです。
母親から便所に捨てられた赤ん坊・キキはネズミに拾われ地下水道で育てられる。
成長した彼はネズミを統率し強奪を繰り返す“地獄の軍団”を組織。
人間に対して徹底的な復讐を企てる。・・・・
ある女性との出会いから“人間”の感情を少しずつ取り戻していき、人間として苦しむ。・・・
彼が、一般の人にも名が知られるようになったのは、「まんだらけ」のカタログ誌に連載された半自伝漫画『劇画漂流』が刊行されてからであろう。原案の桜井昌一は、彼のお兄さん。
単行本
この作品をきっかけにして、国内外の幾多の漫画賞を受賞している。70歳近くになり、脚光をあびるようになった訳です。
受賞歴
- 2005年アングレーム国際漫画祭特別賞
- 2006年サンディエゴ・コミック・コンベンション特別賞
- 2006年度『タイム誌』ベストコミックス第2位
- 2009年手塚治虫文化賞大賞
- 2010年アイズナー賞最優秀アジア作品・最優秀実話作品
- 2010年このマンガを読め!第2位
- 2012年アングレーム国際漫画祭世界への視線賞
特に記すべきは、そのアニメ化の公開でしょう。 Wikipediaの記述を拝借する。
2011年、シンガポールのエリック・クー監督により、『劇画漂流』と他の短編作品5話を原作とした長編アニメーション映画『TATSUMI』が製作・公開、日本では2014年11月から全国公開された。
このトレーラー動画は、短時間なので是非見てください。
映画TATSUMI-タツミ(マンガに革命を起こした男)国内トレーラー
エリック・クー監督
もし時間があれば、こちらの動画も見てほしい。本人のナレーション付きです。
『TATSUMI マンガに革命を起こした男』本編冒頭20分間映像
この動画を一人でも多くの方に見て頂ければ、この記事にも意味がある。終戦後の苦しい時期を過ごしたわけではないが、作者の心情はよくわかるように思えるのだ。 順序が逆になってしまったが、Wikipediaによる辰巳 ヨシヒロの記事。 |
辰巳ヨシヒロ | |
---|---|
本名 | 辰巳嘉裕 |
生誕 | 1935年6月10日 大阪府大阪市 |
死没 | 2015年3月7日(満79歳没) |
国籍 | 日本 |
職業 | 漫画家 |
活動期間 | 1954年 - 2014年 |
ジャンル | 劇画 |
代表作 | 劇画漂流 |
受賞 | 第1回日本漫画家協会賞努力賞(『人喰魚』) 第32回アングレーム国際漫画祭特別賞 第13回手塚治虫文化賞大賞(『劇画漂流』) 2010年度アイズナー賞最優秀アジア作品賞、最優秀実話作品受賞(『劇画漂流』) 第39回アングレーム国際漫画祭世界の視点賞(『劇画漂流』) |
辰巳 ヨシヒロ(たつみ ヨシヒロ、1935年6月10日 - 2015年3月7日)
日本の漫画家、古書店経営者。大阪府大阪市天王寺区出身。本名、辰巳嘉裕。兄は、漫画家・漫画出版社経営者の桜井昌一。
貸本漫画家として活躍しながら、「劇画」という名称を提唱、「劇画」誕生にあたって重要な役割を果たした。
1970年代以降は、社会の底辺に位置する人々の悲哀や屈折を陰鬱なタッチで描いた作品を『ガロ』などに多数発表する。それらの作品群は日本国外でもヨーロッパを中心に高く評価されている。
略歴については、このように記されている。
・昭和10年、大阪生まれ。中学時代から漫画家を目指し、26年「愉快な漂流記」でデビュー。
・従来の漫画の概念を超越した新たな手法を模索し、コマ数を多く使ったよりリアルな作風を確立。自ら「劇画」と名付ける。神保町で漫画専門の古書店を営む。仏教関係の漫画も出版する。
・主に社会の底辺に生きる人々を描いた短編で特に海外で高い評価を受け、2005年の仏アングレーム国際漫画祭特別賞など多くの賞を受賞。
・2011年にシンガポールで、辰巳漫画をモチーフにした映画「TATSUMI マンガに革命を起こした男」が制作された。
・代表作に自伝的長編漫画「劇画漂流」などがある。
彼の漫画単行本の表紙を見ていこう。 時代は、順不同です。
またその単行本や雑誌のページから。
英語版のページもある。
彼は寡作と思いがちだが、実際は大量の作品がある。手塚治虫の作品数とは比べものにはならないけどね。
全く意味のない作業だが、Wikiよりコピペしてみる。国内の出版に限ってもこれだけある。プレミア本になっているのも沢山ある。入手したいとは思わぬが、これからは読むことさえ難しくなるんだろう。
国内
- こどもじま(鶴書房、1954年)
- 密林巨人(鶴書房、1954年)
- ビックと豆の木(鶴書房、1954年)
- 南海のQ島(鶴書房、1954年)
- 七つの顔(日の丸文庫、1954年)
- 鉄腕げん太(東光堂、1954年)※大和義郎名義
- 十三の眼(日の丸文庫、1954年)
- ピカドン先生(日の丸文庫、1954年)
- 21の指紋(日の丸文庫、1954年)
- 木刀先生(日の丸文庫、1955年)
- 霧の小次郎(榎本書店、1955年)※井上三平名義
- 紅孔雀(榎本書店、1955年)※井上三平名義
- 消えた峡谷(東光堂、1955年)※大和義郎名義
- アバラヤ殿下(日の丸文庫、1955年)
- 力道山物語(榎本書店、1955年)※井上三平名義
- 33の足跡(日の丸文庫、1955年)
- プロレス狂時代(日の丸文庫、1955年)
- 開化の鬼(日の丸文庫、1955年)
- 闇に笑う男(日の丸文庫、1955年)
- 声なき目撃者(日の丸文庫、1956年)
- 帰ってきた男(日の丸文庫、1956年)
- 黒い吹雪(日の丸文庫、、1956年)
- 銃弾の街角(日の丸文庫、1956年)
- 顔役(ボス)を倒せ!(セントラル文庫、1956年)
- 目撃者(セントラル文庫、1956年)
- 霧(兎月書房、1958年)
- 俺は待ってるぜ(兎月書房、1958年)
- 私は消えてゆく(わかば書房、1959年)
- 続・私は消えてゆく(わかば書房、1959年)
- 立ち上がる男(三洋社、1960年)
- 真夜中のドラム(日の丸文庫、1961年)
- 走り行く男(セントラル文庫、1961年)
- 墓場貸します(ホープ書房、1961年)
- 男ありて 1 - 4(三洋社、1961年)
- ものすごいやつら(日の丸文庫、1962年)
- マシンガン野郎(東京トップ社、1962年)
- 男だけの世界(日の丸文庫、1962年)
- オリにかえれ(東京トップ社、1962年)
- 犯罪横町(セントラル文庫、1962年)
- 墓場紳士(東京トップ社、1962年)
- けものの眼ざめ(東京トップ社、1962年)
- 葬式商人(セントラル文庫、1962年)
- 人間狩り(東考社、1962年)
- 四角い戦場(東京トップ社、1962年)
- 視界0(東考社、1962年)
- 悪人工場(やなぎプロ、1962年)
- めくら狼(東考社、1962年)
- やせ犬の詩(東京トップ社、1962年)
- 四角い野望(東考社、1962年)
- おとし穴作戦(東京トップ社、1963年)
- 死亡広告(東考社、1963年)
- 殴り込み四十七人(東京トップ社、1963年)
- 背骨にノック(東考社、1963年)
- あいつ売ります(東京トップ社、1963年)
- 熱い船(東考社、1963年)
- ギャング大統領(東京トップ社、1963年)
- この悪党ども(第一プロ、1963年)
- 殴ってサヨナラ(第一プロ、1963年)
- 男対男(第一プロ、1963年)
- 太陽をけとばせ(第一プロ、1963年)
- 悪党市場(第一プロ、1963年)
- ならず者(第一プロ、1963年)
- ぶっこわし作戦(第一プロ、1964年)
- 爆弾かかえて(第一プロ、1964年)
- ガチョン社員(第一プロ、1964年)※あさひ昇名義
- 荒野に叫べ(第一プロ、1964年)
- ホテル13号室(第一プロ、1964年)
- 夢見る探偵屋(第一プロ、1964年)
- 死者が会いに来る(第一プロ、1964年)
- 透明人間(第一プロ、1965年)
- 泣くな青春(第一プロ、1966年)
- 人間蒸発(第一プロ、1967年)
- 劇画大学(ヒロ書房、1968年)
- 青春山脈(ヒロ書房、1968年)
- 地球最後の日(ヒロ書房、1968年)
- 死者が歩く(ヒロ書房、1968年)
- 忍者火山(ヒロ書房、1968年)
- 進め!悪党(ヒロ書房、1968年)
- 青春に涙あり(ヒロ書房、1969年)
- 象の道(ヒロ書房、1969年)
- 爆発寸前(ヒロ書房、1969年)
- 男対男(ヒロ書房、1969年)
- 空気男(ヒロ書房、1969年)
- 泣くなおばけ(ヒロ書房、1969年)
- 学園大統領(ヒロ書房、1969年)
- 殴ってサヨナラ(ヒロ書房、1969年)
- 大空に泣け(ヒロ書房、1969年)
- 人喰魚(ヒロ書房、1970年)
- あんた誰や?(ナポレオンブックス、1971年)
- 群集のブルース(ナポレオンブックス、1971年)
- 人生なすび(ナポレオンブックス、1971年)
- 長い長い夏(ナポレオンブックス、1971年)
- 男一発(青林堂、1972年)
- 銭牝 1 - 3(原作:花登筐、芳文社、1975年)
- 紅摺大車輪勝負(土曜出版社、1975年)
- 鳥葬(小学館、1976年)
- コップの中の太陽(小学館、1976年)
- こどもじま よいまんが一年生(東考社、1976年7月)
- 声なき目撃者(東考社、1976年11月)
- ザ・ギャンブラー(原作:花登筐、少年画報社、1977年)
- トルコ野郎(芸文社、1978年)
- てっぺん○次 1 - 2(秋田書店、1978年)
- 懸賞狼 1 - 3(原作:梶川良、久保書店、1980年)
- 『懸賞狼 』上下として久保書店(リターンフェスティバル)で再刊。2007年
- 賞金雀鬼(『懸賞狼』を抜粋して雑誌形式でまとめたもの 原作:梶川良、芳文社、1981年)
- 地獄の軍団 1 - 6(実業之日本社、1982年 - 1983年)
- SFもどき(実業之日本社、1983年7月)
- まんがでわかる海外旅行トラベル・トラブル(集英社、1989年5月)
- 修験道のはなし ひろさちやの仏教コミックス(原作:ひろさちや、鈴木出版、1990年1月)
- ミックス(原作:ひろさちや、鈴木出版、1990年)
- 乾いた季節 1 - 2(秋田書店、1990年6月)
- ダルマ大師 禅を伝えた僧 ひろさちやの仏教コミックス(原作:ひろさちや、鈴木出版、1991年4月)
- 大日如来 宇宙のほとけ ひろさちやの仏教コミックス(原作:ひろさちや、鈴木出版、1992年10月)
- 密教のはなし ひろさちやの仏教コミックス(原作:ひろさちや、鈴木出版、1994年1月)
- 最澄の生涯 ひろさちやの仏教コミックス(原作:ひろさちや、鈴木出版、1994年9月)
- 最新!まんがでわかる刑法(原作:円山雅也、集英社、1994年11月)
- 栄西の生涯 ひろさちやの仏教コミックス(原作:ひろさちや、鈴木出版、1995年6月)
- 空海の宇宙 ひろさちやの仏教コミックス(原作:ひろさちや、鈴木出版、1996年9月)
- 歓喜天愛欲の神 ひろさちやの仏教コミックス(原作:ひろさちや、鈴木出版、1997年6月)
- 大発見(青林工藝舎、2002年11月)
- 大発掘(青林工藝舎、2003年9月)
- 懸賞狼 1 - 2(原作:梶川良、久保書店、2007年)
- 劇画漂流 上下(青林工藝舎、2008年) - のち、講談社漫画文庫 2013年
- 劇画寄席 芝浜(バジリコ、2009年7月)
- 復刻版 黒い吹雪(青林工藝舎、2010年)
- 劇画暮らし(本の雑誌社、2010年10月) - のち角川文庫 2014年10月
- TATSUMI(青林工藝舎、2011年)
- 辰巳ヨシヒロ傑作選 (ビームコミックス 2014年10月)
辰巳ヨシヒロさん。 多くの面白い劇画を楽しませて頂きました。 どうか安らかにお眠りください。 合掌
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