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2015年4月19日日曜日

微分方程式講義(2015年版)IV

引きつづき IV をアップする。

2.5 その他の微分方程式


この節では、求積法 により解くことのできる良く知られた方程式を学ぼう。
 

 

1.ベルヌーイ型微分方程式


(2.17)    y' + a(x)y  + b(x)yⁿ = 0 


を考える。 このような y についての n次式を含む非線形微分方程式を 

ベルヌーイ型微分方程式 という。 


ダニエル・ベルヌーイ(Daniel Bernoulli, 1700年2月8日 - 1782年3月17日)

スイスの数学者・物理学者。


n=0    または n=1 のとき、(2.17)  は1階線形方程式になる。 

(2.17)  は線形でないが、置き換えによって線形に直せる。

u = y1-n    とおくと、 u' = (1-n)y-n      となる。 ここで uyⁿ = y  に注意する。 

したがって、(2.17) は、

           u'yⁿ /(1-n)  +  a(x)uyⁿ +  b(x)yⁿ = 0 
 
すなわち  

 (2.18)    u' + (1-n) a(x)u  = - (1-n) b(x)

となる。 これは、1階線形微分方程式なので 2.3節の方法により解ける。

 
 
 
 
最後に 自然数 n は、任意の正数でも差し支えないことを注意しておく。
 
 


2. リッカチ型方程式


y について2次の非線形方程式

(2.19)    y' = a(x) + b(x)y + c(x)y² 


を考える。 この形の方程式を  リッカチ型方程式 という。


ヤコポ・フランチェスコ・リッカチJacopo Francesco Riccati、1676年5月28日 - 1754年4月15日)

イタリアの数学者。


一般には、この方程式は求積法により解けない。 

しかし(2.19) の一つの解が求まれば  求積法により解くことができる。 

y = y₀(x) を (2.19) の一つの解とする。 u = y - y₀   とおく。  

y' = u' + y₀'  なので 代入して

     u' + y₀' = a(x) + b(x) u + b(x)y₀ + c(x)y₀² + 2c(x)u y₀ + c(x)u² 

整理すると、

                   u'  = (b(x) + 2c(x) y₀)u + c(x)u²  + (y₀' + b(x)y₀ + c(x)y₀²) 

この式の最後の項は 0  なので


(2.20)     u'  = (b(x) + 2c(x) y₀)u + c(x)u²  



となり、 これは n=2 の場合の ベルヌーイ型微分方程式となる。

さらに v=1/u  とおくと u'= -v'/v² なので (2.20)   代入すると

                -v'/v²  = (b(x) + 2c(x) y₀)[1/v] + c(x)[1/v²] 

となり -v²倍して方程式

         v'  = -(b(x) + 2c(x) y₀) v - c(x) 


が得られる。 これは、v についての1階線形方程式なので

これを解いて (2.19) の解が得られる。 

 


3. クレロー型方程式


(2.21)     y  =  xy' + f(y') 

の形の方程式を クレロー型方程式  という。 ただし f は C¹級とする。  



アレクシス・クロード・クレロー(Alexis Claude Clairaut、1713年5月13日 - 1765年5月17日)

フランスの数学者、天文学者、地球物理学者。


(2.21)  を x で微分して  y' = xy'' + y' + f(y')y'' つまり

                  y''(x+ f(y')) = 0

これから

(i)  y''=0    の場合 

y'' = 0   ⇒ y' = C  ⇒ y = Cx + D

ところで、 (2.21) より D = f(C) となるから

        y = Cx + f(C)    (C: 任意定数) が解。


(ii)  x+ f(y') =0    の場合 

このとき y' = p をパラメータとすると (2.21) と連立して

(2.22)     x = - f '(p),   y  =  -p f '(p) + f(p) 

がえられる。  この p をパラメータとする 曲線 (x(p), y(p)) は (2.21) の解であるが

(i) の解の任意定数 C をどのように選んでもこの解は得られない。 この意味で この曲線を

(2.21) の 特異解 という。 

実は、(i) の直線群の包絡線が (2.22) で与えられる。 

 
 
 

 

 

2.6 微分不等式とグロンウォールの不等式


微分不等式 とは、微分方程式の等号を不等号に変えたものと言える。

方、グロンウォールの不等式とは、積分を含む不等式である。共に理論上大切な不等式である。

以下、積分記号を美しく表示するのは、難しいので 区間 [a, x] 上の積分を [a,x] で表わす。



定理 2 φ(x),  Ψ(x) は、区間 [a, b] 上で 連続な実数値関数とする。

[a, b]  上の関数  y = y(x)  が不等式 

(2.23)    y' + φ(x)y   Ψ(x)  

をみたすならば x∈ [a, b]  に対して不等式 

(2.24)  

y(x)   exp(- [a,x] φ(t)dt ){y(a) +  [a,x] Ψ(t)exp([a,t] φ(s)ds)dt}

がなりたつ。  

とくに φ(x) ≡ A > 0,   Ψ(x) ≡ B ならば 結論 (2.24)  は、 

(2.25)     y(x)   exp(-A(x-a)) y(a) + [B/A] (1 -  exp(-A(x-a))

となる。

(証明)  u = exp([a,x] φ(t)dt) >0 とおく。 (2.23)  の両辺に u > 0 を掛けて

y'u + φ(x)uy   uΨ(x).    ところで、  積の微分公式より  

(yu)' = y'u + u'y = y'u + φ(x)uy  なので、 この不等式より 

            [d/dx](y(x)u(x)) ≦ Ψ(x)u(x)

がしたがう。 この不等式を a から x まで積分すると 


         y(x)u(x) ≦  y(a)u(a) + [a,x] Ψ(t)u(t)dt
 
u(a) = 1,   1/ u(x) = exp(- [a,x] φ(t)dt)  なので、 上式を u(x) で割って

     y(x)   exp(- [a,x] φ(t)dt ){y(a)[a,x] Ψ(t)exp( [a,t] φ(s)ds)dt}

がいえる。 これは、 (2.24)  に他ならない。

さらに φ(x) ≡ A > 0,   Ψ(x) ≡ B のときは、(2.24) に代入すると

  y(x)   exp(-A(x-a)) {y(a) + B[a,x] exp(A(t-a))dt }

 となり、積分を実行すると (2.25)   が得られる。               (証明了)



微分不等式 に対応して、積分不等式 というのがある。 

これは、微分不等式を積分した形の不等式である。 その例である応用上も有益な

グロンウォールの不等式 をのべよう。


定理 3 φ(x),  y(x) は、区間 [a, b] 上で 連続な実数値関数で

φ(x) ≧ 0  とする。  c  は実定数とし、 

y = y(x)  が 積分不等式 

(2.26)      y(x)   c + [a,x] φ(t)y(t) dt  

をみたすならば x∈ [a, b]  に対して不等式 

(2.27)     y(x)   c exp([a,x] φ(t)dt )

がなりたつ。


(証明)   F(x)  =  [a,x] φ(t)y(t) dt  とおく。  φ(x) ≧ 0  なので 

(2.26)  の両辺に φ(x) を掛けると  

φ(x) y(x)   c φ(x) + φ(x) F(x) .    

 一方 F'(x) = φ(x) y(x)  なので この不等式から、 F(x)  に関する微分不等式

             F'(x) - φ(x)F(x)   c φ(x)  

が得られる。 よって、定理 2 より    F(a) = 0  に注意して

                   F(x)   c exp([a,x] φ(t)dt )[a,x] φ(t)exp(- [a,t] φ(s)ds)dt

ここで、(2.26)  を使うと

y(x)   c  + F(x)  

          ≦  c + c exp([a,x] φ(t)dt ) [a,x]  φ(t)exp(- [a,t] φ(s)ds)dt

          =  c { 1 +  exp([a,x] φ(t)dt )[a,x] [-(d/dt) exp(- [a,t] φ(s)ds)] dt }
           c { 1 +  exp([a,x] φ(t)dt ) [- exp(- [a,x] φ(s)ds+ 1]}
        =  c exp([a,x] φ(t)dt )

となり結論 (2.27) が従う。       (証明了)




定理3は、つぎのように一般化される。 証明を試みよ。(演習問題

定理 3’ φ(x),  y(x),  β(x) は、区間 [a, b] 上で 連続な実数値関数で

φ(x) ≧ 0  とする。  y = y(x)  が 積分不等式 

      y(x)   β(x) + [a,x] φ(t)y(t) dt  

をみたすならば x∈ [a, b]  に対して不等式  

     y(x)  ≦ β(x) + [a,x] β(t)φ(t) exp([t,x] φ(s)ds) dt

がなりたつ。
 
 
 
 

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