ページビューの合計

2015年8月4日火曜日

非線形偏微分方程式の最適制御 (1)

私のかっての専門分野は、非線形偏微分方程式の最適制御逆問題である。今や退職して2年と4か月しかならないのに、諸般の理由により研究能力はガタ落ちである。だれも信じてはくれないだろうが、かっては優秀な制御理論の研究者だったのだ。

それで、その退化を防ぐべく、大学院生の研究指導の際に作成していた原稿を、ここに講義原稿としてアップする。纏めて本にする気は、完全に失せたのがその理由でもある。(どこも出版してくれない!)

大学院初年級の講義なので、学部生の方も函数解析の素養があれば容易に理解できると思う。
数式がやたら出てくるので、TEXで作成した原稿をスキャンして貼り付ける方式を取る。
不定期で連載する予定。


基本的なテキストは、

Optimal Control of Systems Governed by Partial Differential Equations (Grundlehren der mathematischen Wissenschaften)  Springer

Jacques Louis Lions


日本語訳もあるが、現在絶版。入手は困難。

偏微分方程式と最適制御 〈1〉〈2〉 東京図書 リオン (著), 黒田 義輝 (翻訳), 牧野 昭 (翻訳)

基礎理論の参考資料で、私が常に参照したのがこの本:

Mathematical Analysis and Numerical Methods for Science and Technology
Volume 5 Evolution Problems I

Authors: Dautray, Robert, Lions, Jacques-Louis   [D-L]



名著です。700ぺージもあります。全6巻所有しているが、満足に読んだのは、この5巻のみ。死ぬまでに、全巻目だけは通したいと以前は思っていたが、どうやら無理らしい。恐らく寿命が足りない。


まづ前書き

この講義では、非線形偏微分方程式で支配される系の最適制御問題を取り扱いたい。

線形の楕円型、放物型および双曲型の分布系に対する2次コスト最適問題は、

フランスのLions およびその学派により1960年代半ばには殆ど完成されており、

それ以後は、Barbu 等多くの研究者による変分的非線形問題や、

一般のコストに対する制約条件付の最適制御問題がその研究の中心になっている。

しかしながら、非線形制御系に対する研究は特殊な方程式に制限される場合が多く、

一般的かつ統一的な立場からの研究成果は殆ど見当らない。

とまあ、20年位前はそうだったのである。 

その後、 I. LasieckaR. Triggiani などが現れて、線形理論が主とはいえ、

凄まじい勢いで最適制御理論を整備していったのである。



弱小研究者であった私は、

ついていけなくなり研究対象を非線形波動方程式に特化したのであった。

苦い思い出である。



それはさておき、この講義では、Dautray-Lions の変分法的な定式化に基づき、
 
より一般な非線形偏微分方程式に対して統一的に2次コスト最適制御理論を展開したい。
 
また、その具体的な偏微分方程式への応用を論じる予定である。

難しい理論ではないが、私なりの工夫や計算処理を行っていて全くのLionsの

物まね理論ではない積りである。
 
講義内容については、本ではないので、ある程度気儘に進める。再計算したりして、

勉強をし直そうと思っている。
 
理論面の結果しか、述べないが、実際の応用では、計算機を用いた数値解析が特に

重要になる。
 
だが、現在その手立てを失った身としては、致し方なくこの方面を無視するのである。
 
 
 
それでは、非線形偏微分方程式の最適制御の講義の始まり。 


第1章  非線形一階発展方程式


 この章では、非線形放物型発展方程式に対する最適制御問題を展開する基礎を与える。 
 
すなわち、Hiltert空間における非線形一階発展方程式解の存在一意性正則性
 
についての基礎を学ぶ。
 
基礎理論は偏微分方程式の変分法的取り扱い 

(cf. Dautary-Lions [D-L],  Lions-Magenes [L-M] )  にその基礎をおいている。
 
基礎となる非線形放物型方程式に対して、非線形性を大きく2つのクラスに分けて、
 
解の存在、一意性、正則性等の基礎結果をのべよう。

 



 




 



次節で、解の存在と一意性の証明を行うが、大変長いので次回にしよう。
 

 
 
 

0 件のコメント:

コメントを投稿