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2018年4月16日月曜日

微分方程式講義(2018年版)III 

何故だかわからないが原稿をブログで編集すると(以前はなかったことだが)プレビューでは勝手に式や文字のフォントサイズが変わってしまう。元に戻そうと色々と手を尽くしてフォントの大きさを変えたり書式変更してみるが上手くいかない。まあ読めない事はないのでそのままにしておきます。

3回目の講義原稿は、4節から始める。


2.4 完全微分方程式

 

微分形の方程式

(2.9)    P(x,y)dx + Q(x,y)dy = 0

において、 


(2.10)    P(x,y) = ∂F(x,y)/∂x,       Q(x,y) = ∂F(x,y)/∂y      

となる F(x,y) が存在するとき、(2.9) は 完全微分方程式 という。 

このとき、 (2.9)  は 全微分 dF(x,y)  を用いて

(2.11)    dF(x,y) = [∂F(x,y)/∂x] dx + [∂F(x,y)/∂y]dy = 0

とかける。 したがって、  (2.10) をみたすとき、 (2.9) の解は、

(2.12)    F(x,y) = C   (C は、積分定数)

とかける。  特に F が C²級 とすると 

      ∂P(x,y)/∂y = ∂²F(x,y)/∂y∂x =  ∂²F(x,y)/∂x∂y = ∂Q(x,y)/∂x

つまり

(2.13)    ∂P(x,y)/∂y  =  ∂Q(x,y)/∂x

がなりたつ。 実は、逆がいえる。


定理 1 P(x,y),  Q(x,y)  
は、 C¹級 とする。

 (2.9)    P(x,y)dx + Q(x,y)dy = 0
 
が 完全形 であるための 必要かつ十分条件は、
   
 (2.13)    ∂P(x,y)/∂y  =  ∂Q(x,y)/∂x     

である。

(証明) (2.9)  が完全形なるとき、 (2.13) が成り立つことはすでに示した。 

逆を示そう。 今  F(x,y) =P(x,y)dx + R(y)  として、  R(y) をうまく取れば

dF(x,y) = 0  なることを示すとよい。 ∂F(x,y)/∂x = P(x)   なので 

   ∂F(x,y)/∂y =  (∂/∂y)P(x,y)dx + R'(y) = Q(x,y) 

となるように R(y)  を決めるとよい。  ところで (2.13) より

     (∂/∂x)[Q(x,y)  - (∂/∂y)P(x,y)dx ] =  ∂Q(x,y)/∂x - (∂²/∂x∂y) ∫P(x,y)dx
                                
       =    ∂Q(x,y)/∂x -  (∂/∂y)(∂/∂x) P(x,y)dx  =   ∂Q(x,y)/∂x -  ∂P(x,y)/∂y  = 0        

となり、 Q(x,y)  - (∂/∂y)P(x,y)dx は x に無関係、 

つまり y だけの関数になる。 

 よって   R'(y) = Q(x,y) - (∂/∂y)P(x,y)dx  より、 この式を y で積分して

       R(y) = ∫[Q(x,y) - (∂/∂y)P(x,y)dx ]dy

とすればよい。 実際

dF(x,y) = [∂F(x,y)/∂x]dx + [∂F(x,y)/∂y]dy 
              
    = P(x,y)dx + [R'(y) + (∂/∂y)P(x,y)dx] dy  

             =  P(x,y)dx + [Q(x,y)  - (∂/∂y)P(x,y)dx + (∂/∂y)P(x,y)dx] dy  

             =  P(x,y)dx + Q(x,y) dy 

がなりたつからである。 


例をあげる。




積分因子

一般に、微分方程式 (2.9) は完全ではない。 条件 (2.13) を満たさないものは多数ある。

しかし、ある関数 M(x,y) を (2.9) の両辺にかけると、完全になる場合がある。 つまり

(2.14)    M(x,y)P(x,y)dx + M(x,y)Q(x,y)dy = 0
 

が 完全形 になるとき、 このような関数  M(x,y) のことを、積分因子  という。

従って、このとき

(2.15)   (∂/∂y)(M(x,y)P(x,y))  =   (∂/∂x)(M(x,y)Q(x,y))

がなりたつ。 すなわち M(x,y) は

(2.16)   P(∂M/∂y)- Q (∂M/∂x) = M((∂Q/∂x)- (∂P/∂y)) 

をみたすことが必要十分である。 (2.16) は M について1階偏微分方程式で、 

これを解くことは、一般に容易ではない。 

しかし特殊な場合には、M を求めることは可能である。

非常に都合のいい条件設定だが、M が x のみの関数となったとする。 

このとき、(2.16)  の左辺第1項は消えるので、さらに都合のよい仮定だが

(Qx- Py)/Q が x のみの関数であれば 変数分離形として積分因子 M  が求まる。


その他の場合も考えられる。 ここでは、この場合も含め3つの特殊な場合を考える。


(i)  (Qx- Py)/Q が x のみの関数の場合

M(x,y)=M(x)  と考えることができる。 このとき、(2.16) より

dM/dx = [1/Q](Py - Qx) M  

となり    M(x) = exp ( (Py - Qx)/Q dx)  が積分因子となる。


(ii)  (Qx- Py)/Q が y のみの関数の場合

M(x,y)=M(y)  と考えることができる。 このとき、(2.16) より

dM/dy = [1/P](Qx- Py) M  

となり    M(y) = exp ( (Qx- Py)/P dy)  が積分因子となる。



(iii)  P(x,y),   Q(x,y)   が同次式の場合、 つまり

P(λx, λy) = λn P(x, y),    Q(λx, λy) = λn Q(x, y)      の場合。

 このとき、

 M(x,y) = 1/ (xP(x,y) + yQ(x,y))   は、積分因子になる。  

これを確かめる。  講義ではこの部分は省略する。


ここで、積分因子を求めることによって解ける微分方程式の例を2つあげよう。



 

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