北里大学で受賞のインタビューに答える大村智氏
日本の科学界にとって、大変喜ばしいことである。これで日本人受賞者は、23人で、世界では5位になる。
産経新聞ニュースより:
スウェーデンのカロリンスカ研究所は5日、2015年のノーベル医学・生理学賞を、微生物が作り出す有用な化合物を多数発見し、医薬品などの開発につなげた北里大特別栄誉教授の大村智氏(80)ら3氏に授与すると発表した。大村氏が見つけた化合物は熱帯地方の風土病の薬などで実用化しており、医療や科学研究の発展に大きく貢献した功績が評価された。
大村智氏の業績の内容は、よく分かっていないが、毎日新聞、朝日新聞、東京新聞などの記事を読むとこのように要約される。
1. 1974年、静岡県伊東市のゴルフ場(氏の趣味がゴルフ)で採取された土から、寄生虫駆除に効果のある化学物質を出す放線菌を発見。物質はエバーメクチンと名付けられた。
エバーメクチンを生産する放線菌
2. 1981年、エバーメクチンをもとに開発された動物用の寄生虫駆除薬イベルメクチンが米メルク社から売り出された。少量で駆除でき、耐性を持つ寄生虫も現れにくいのが特長。世界各国で家畜の牛や豚などに使われて、食料の安定供給に貢献した。
3. イベルメクチンは人の寄生虫にも有効と分かり、寄生虫駆除薬メクチザンが作られた。大村氏とメルク社は、重い寄生虫病に悩む人たちにメクチザンを無償提供した。
メクチザン
産学連携の草分けで、もっとも成功した例の1つだそうである。
オンコセルカ症(河川盲目症)やリンパ系フィラリア症(象皮症)などの予防のため、毎年およそ三億人がこのメクチザンをを飲んでいる。
アフリカ視察中の大村博士
オンコセルカ症の恐怖から解き放たれた純粋な瞳の子供たちに囲まれて。
大村智氏のWikipediaによる解説では、このようになっている。
大村 智 | |
---|---|
人物情報 | |
生誕 | 1935年7月12日(80歳) 日本・山梨県北巨摩郡神山村(現・韮崎市) |
国籍 | 日本 |
出身校 | 山梨大学 東京理科大学大学院 |
学問 | |
研究分野 | 有機化学 |
研究機関 | 北里大学 |
主な業績 | イベルメクチン |
主な受賞歴 | 日本学士院賞(1990年) コッホ・ゴールドメダル(1997年) ガードナー国際保健賞(2014年) 朝日賞(2015年) ノーベル生理学・医学賞(2015年) |
凄いもので、昨日発表されたというのに、 もうノーベル賞受賞の記述がある! |
|
大村 智(おおむら さとし、1935年7月12日 - )
日本の有機化学者。北里大学特別栄誉教授。学位は、薬学博士(東京大学、1968年)、理学博士(東京理科大学、1970年)。専門は、有機合成化学、触媒開発研究。
山梨県北巨摩郡神山村(現・韮崎市)生まれ。2015年ノーベル生理学・医学賞受賞。
女子美術大学名誉理事長および開智学園名誉学園長、韮崎大村美術館長も務める。
略歴:
- 1954年 - 山梨県立韮崎高等学校卒業後、山梨大学学芸学部自然科学科へ進学。
- 1958年 - 山梨大学学芸学部自然科学科卒業。大学卒業後は理科教諭として東京都立墨田工業高等学校定時制に勤務。
- 1963年 - 東京理科大学大学院理学研究科修士課程修了
- 1963年 - 山梨大学助手
- 1965年 - (社)北里研究所入所
- 1968年 - 北里大学薬学部助教授
- 1968年 - 東京大学より薬学博士「Leucomycinに関する研究」
- 1970年 - 東京理科大学より理学博士「ロイコマイシン、スピラマイシン及びセルレニンの絶対構造」
- 1971年 - ウェズリアン大学客員教授
- 1975年 - 北里大学薬学部教授(1984年まで)
- 1985年 - 学校法人北里学園理事
- 1990年 - 北里研究所長(2008年まで)
- 1997年 - 女子美術大学理事長(一期目、2003年まで)
- 2001年 - 北里大学生命科学研究所長(初代、2003年まで)
- 2002年 - 北里大学大学院感染制御科学府教授(2007年まで)
- 2005年 - 米国ウェズリアン大学 MaxTishler教授
- 2007年 - 北里大学名誉教授、女子美術大学理事長(二期目、2015年まで)
- 2008年 - (学)北里研究所名誉理事長(2012年6月まで)
- 2012年 - (学)北里研究所顧問
- 2013年 - 北里大学特別名誉教授
- 2015年 - 女子美術大学名誉理事長
朝日賞など、大きな賞をすでに幾つか受賞している。謙虚な人柄で、正しく研究者の鏡のような方ですね。後進の指導とか、科学行政にも適切なご意見を与えて下さると思います。
美術にも造詣が深く、韮崎大村美術館長も務めている。
岸田夏子さんの桜(韮崎大村美術館)2008年
あらためて日本の科学技術力の高いことを、秘かにだが誇らしく思います。ところで、これがつづくかと言うと心もとないのが現状である。
最近は国の財政事情から、大学の研究基盤は危機的なものになっている。独立法人化により、弱者切り捨ての原理がまかり通り、基礎研究の維持が困難になっている。それは如実に昨今の状況に現れている。日本の主要大学の世界大学ランキングは軒並みに落ちているし、論文発表数、論文引用回数も減っている。これを何とかしないといけないのでないだろうか。
そのためには、無駄な道路や空港など金食い虫の予算を大幅に減らし、そちらを文教予算にまわして研究教育の充実を図るべきでないのか。研究に夢を持ち、その素晴らしさを感じたり教えたりする事のできる研究者や教育者を育成すことが最も肝要と思う。
若手研究者の定職率の倍増なんてのは、予算が確保されれば、文科省もやろうと思えばできないことはないと思うんだがね。と、何の力もない爺さんは思うのであった。 これでおしまい。
0 件のコメント:
コメントを投稿