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2014年2月26日水曜日

論文のレビューは大変

 


没にしていた数学ネタ投稿で、本人も面白くないのであるが記録用にアップする。
タイトルを レフェリー失格 と直したほうがピッタリだ。

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以前に 論文のレフェリーを2件引き受けた。 1つは、SIAM J. Control  という一流誌で、
もう一つもそれなりのジャーナルであった。 

レフェリーレポートを書くのは、2本とも大変だった。
SIAM の論文のほうは、道具立てはすごくて相当の結果を出したように書いてあるが、
1週間かけて精読すると、こけおどしの結果で証明も怪しい事がわかる。 

さらに1週間かけて詳細な報告を書き、怪しい箇所と自己撞着を起こしているところを列挙した。
それを、Reviewer 用のホームぺージ上にアップした。

最近のレフェリーは、皆この形式になってしまい、古い人間としてはやり難い事だ。
いずれにせよ、その論文はRejectになったようだ。

もう一つは、 結構苦労して読んだのだが良い結果だと思ったので、 
2,3の改良点を述べて Minor Revision と判定した。 
しばらくして、編集者 から、もう1人のレフェリーが厳しかったらしく
Major Revision の報告が来た。 それからは、修正原稿の送付がない。
著者が取り下げたのだろうか? 良い内容だったの惜しい気がする。

これでやれやれと思っていたが、1週間ほど前に某有名教授から、
制御関連の論文の査読の打診があった。 
彼は、超一流の数学 Journal の編集者をしており、その雑誌への投稿論文らしい。 
お門違いの論文であるが、なにやら一見凄そうである。

自分の方の Adjoint Theory の計算が行きづまっていたので、
気分を変えるためにこの論文を読み始めた。 

古典的な変分法の問題を例にとり、そこでは扱われていない重要な場合を
解析するのがその論文の目的。 
そのために、最適制御理論を Impulsive な系で展開すると言う主旨だった。

立派な(私には真似できない)英語で書かれており、
また結果も最大値原理の拡張として意味あるように思えた。

しかし、ちゃんと読むと道具立てが複雑であり、かつ一般的なので証明自体が良くわからない。
というより、証明を別の文献に丸投げしているので確認できない。

しかも 著者は Impulsive な系をそうでない既知の系に帰着できるから
目的の理論展開も可能といっている。 
 
それでは、本質的になにも証明したことにならぬ

あとは、具体例への適用が可能といってるが、色んな付帯条件を付けている。
それでは、重要な場合を解決したことにならぬ

なんだかだまされたような気になった。
これ以上詳しくよむのは、苦痛だったので査読締切はずっと先だったが 
Reject の Short Report を書いてすぐに送った。

大して役に立たなかっただろけど、この種の論文が沢山送られてくるので、
有名雑誌の編集者は大変だなと思ったことだ。
彼は、非常に立派な研究者で、
こんな雑務に時間を割かれるのはたまらぬだろうなと同情しきり。

脇道にそれたが、何が言いたかったかというと、
Review というのは、割りにあわない時間ばかり食う仕事だなということだ。
そういう意味では老人仕事だが、最近の論文をみているとなかなか大変だ。

大きな道具立て難解な理論誤った推論

というパターンが最近の投稿論文には多くなってきた気がする。
現役最後のときに レビューした2編もそうだった。 
一流雑誌への論文発表競争が激化している証拠なのだろうが、憂うべきことだ。

この種の論文は、読んで理解するのが大変なのです。
一見凄そうな論文だと、私のような弱小研究者は恐れ入ってしまうのである。
大理論を当たり前のように振りかざしてくるので、
対手(レフェリー)としては圧倒されて気分的に平伏してしまう。
仰せごもっともとなり、詳細が理解できないものだから判断が甘くなる。 
そして Accept 報告などを書いてしまうのである。  反省。

そこを踏ん張って、証明の詳細にまで踏み込まないと正しいレポートは書けない。
論文を書くのと同じ位のエネルギーのいる場合が多々ある。 
参照文献に当たって、該当箇所の正当性をチェックする。 
文献を探し出す事からして困難になっている老人には、過大な負担である。 
それが出来かねるので中途半端なレポートになったりする。 反省。

やっぱり、退職もしたことだし以前決めたように断ろうと再度決心する。
で、今日のメールをチェックすると知らない Journal から査読依頼がきている。
嗚呼。



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