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2015年5月22日金曜日

微分方程式講義(2015年版)IX

 
3.4 定係数 n 階線形微分方等式

この節では、前節までの結果を用いて 定係数 n 階線形微分方等式 の解の公式を与える。
(3.20)    y(n) + a1y(n-1) + ・・・ + any  = f(x)

とその斉次形

(3.21)    y(n) + a1y(n-1) + ・・・ + any  = 0

を考える。 ここで、 a1,  ・・・,  an     は、定数とする。  

すぐに確かめられるが、 非斉次方程式 (3.20)  の一般解は、 斉次方程式 (3.21)  の一般解と

(3.20)  の一つの解(特殊解)との和で与えられる。  したがって (3.21)  の一般解を求める

ことが重要になる。 (3.21)  の解を y = exp(λx) の形で求めよう。 代入すると、

λn exp(λx)  + a1 λn-1 exp(λx)  + ・・・ + an λ exp(λx)   = 0  なので、exp(λx) でわると

(3.22)   λ + a1 λn-1  + ・・・ + an λ   = 0

が得られる。  この n次方程式が、次のように因数分解されるとする。



 
 

非斉次方程式 (3.20) の1つの解は、 前節の定理11により計算すればよい。

最後に未定係数法についてのべよう。 簡単のため、2階方程式で説明する。

(3.1)    y'' + ay' + by  = f(x) 

の特殊解を求める簡便な方法である。 特性方程式

 (3.3)     λ² + aλ  + b = 0

の根を λ1 ,  λ2    とおく。  

(I)     f(x) = A(x)exp(mx);   A(x) は多項式、 m は実数  とする。

(i)    m が (3.3) の根でない場合、 つまり  m ≠ λ1 ,  m ≠ λ2   のとき、

                   y = C(x)exp(mx);         C(x) の次数  =  A(x) の次数  

として (3.1)  に代入して 恒等式の関係から C(x) の係数を決定する。

(ii)  m が (3.3) の単根の時、 つまり  m = λ1  λ1 ≠ λ2     のとき、

                y = xC(x)exp(mx);         C(x) の次数  =  A(x) の次数

として (3.1)  に代入して 恒等式の関係から C(x) の係数を決定する。

(iii)  m が (3.3) の重根の時、 つまり  m = λ1  λ1 = λ2     のとき、

                y = x²C(x)exp(mx);         C(x) の次数  =  A(x) の次数

として (3.1)  に代入して 恒等式の関係から C(x) の係数を決定する。


(II)     f(x) =  (A(x)cos kx + B(x)sin kx)exp(mx);   A(x),  B(x) は多項式、m は実数     とする。

(i)    m+ki が (3.3) の根でない場合、 つまり  m+ki ≠ λ1  m+ki ≠ λ2   のとき、

                   y = (C(x)cos kx + D(x)sin kx)exp(mx);    

                          C(x),  D(x) の次数  =   Max {A(x) の次数,  B(x) の次数}  

として (3.1)  に代入して 恒等式の関係から C(x),  D(x) の係数を決定する。
 

(ii)  m+ki  が (3.3) の単根の時、 つまり  m+ki = λ1  λ1 ≠ λ2     のとき、

                y = x(C(x)cos kx + D(x)sin kx)exp(mx);   

                           C(x),  D(x) の次数  =   Max {A(x) の次数,  B(x) の次数}  

として (3.1)  に代入して 恒等式の関係から C(x),  D(x) の係数を決定する。

(iii)  m+ki  が (3.3) の重根の時、 つまり  m+ki  = λ1  λ1 = λ2     のとき、

     y = x²(C(x)cos kx + D(x)sin kx)exp(mx);   

                          C(x),  D(x) の次数  =   Max {A(x) の次数,  B(x) の次数}  

               
として (3.1)  に代入して 恒等式の関係から C(x),  D(x) の係数を決定する。


f(x)  が (I) の形の関数と (II) の形の関数の和であれば、それぞれの特殊解を

未定係数法で求めそれらの和を取ればよい。 

例を与えよう。

 
 
 
ここで、述べた特殊解を求める未定係数法 は、高階の定係数方程式に対しても同様に
 
適用できる。 特性方程式の根の重複度に応じて x のべきをかけた形で求めると良い。 
 
最後に、3階の方程式の例をあげる。 
 
 
さて、教科書にはないが1つの重要な補足を加える。



3.5 オイラー - ベルヌーイの 微分方等式 


この節では、 教科書では述べられてないが、求積法によって解くことのできる変数係数

2階線形方程式の例として オイラー - ベルヌーイ型 の方程式をあげよう。 

この方程式は、一般のn階方程式に議論を拡張できるが、ここでは簡単のため 

n=2 として説明しよう。  a,  b を定数として2階の変数係数方程式

(3.23)    x²y'' + axy' + by  = 0 

オイラー - ベルヌーイの 微分方等式 という 。 以下変数 x > 0 とする。

この微分方程式の解は、べき関数を一般解としてもつことが知られている。 y = x     とおいて

(3.23)  に代入すると、

                   x²m(m-1)xm-2  + axmxm-1 + bx   =  xm  {m(m-1) + am + b} = 0  

このことより m は2次方程式

 (3.24)     m(m-1) + am + b = 0

の根となるように取ればよい。  (3.24)  を (3.23) の特性方程式 という。

 (3.24) は、2根 m₁, m₂をもつからそれらに対応する解が 基本解 になる。 

 (3.24) の判別式 D = (a-1)² - 4b  とする。



定理 11 (i)  D > 0 のとき、  (3.24) の相違な2実根を α , β とおくと、 

微分方程式 (3.23) の一般解は、

  (3.25)                   y = C₁xα  + C₂xβ 

で与えられる。

  
 (ii)  D = 0 のとき、  (3.24) の重根を α とおくと、 

微分方程式 (3.23) の一般解は、

  (3.26)                  y =  (C₁+ C₂log x) xα 

で与えられる。

 (iii)  D < 0 のとき、  (3.24) の相違な2虚根を α ± βi  とおくと、 

微分方程式 (3.23) の一般解は、

 (3.27)                y = xα  [C₁cos (β log x) +  C₂sin (β log x ) ] 

で与えられる。


 (証明) (i)   y₁= xα  と  y₂= xβ  が解になることは、確かめた。

 y₁と y₂の一次独立性を示すために、ロンスキアンを計算しよう。 すぐに


W[xα , xβ ] = (β - α)xα+β-1   がわかるので、α ≠ β  よりロンスキアンは恒等的に 0 でない。

したがって xα  と  xβ  は一次独立になり、 (3.23) の一般解は (3.25) で与えられる。


(ii)  y₁=xα  が解になることは明らか。 xm を方程式に代入して計算すると

                           x²(x )'' + ax (xm )' + b x   =    {m(m-1) + am + b} xm   

が得られる。 したがってこの式を m で微分すると   xm  = exp(m log x)  より 

dx/dm =  log x exp(m log x) =  x log x に注意すれば                 

     x²(x log x)'' + ax (x log x)'  + b x log x = (m - α) {2 + (m - α)log x}xm  

となり、  m = α を代入すると、 (xα log x)'' + ax (xα  log x)'  + b xα  log x = 0


つまり、 xα  log x も (3.23) の解。 xα  と xα  log x の一次独立性の証明は 定理2の証明と

同様である。 したがって、この場合の一般解は、(3.26) で与えられる。


 (iii)  複素根を持つ場合、

 y₁ =  xα+βi ,  y₂= xα-βi が2つの一次独立な解になる。  xβi  = exp(i β log x)  なので

 オイラーの公式    exp(iβ log x ) = cos (β log x) + i sin (β log x)    をつかうと、

y₁ =  xα+βi  = xα xβi   =  xα  [cos (β log x) + i sin (β log x ) ] ,

y₂ =    xα-βi   = xα x-βi   =  xα  [cos (β log x) - i sin (β log x ) ] , 

とかける。 したがって、 y₁と y₂の線形結合

(y₁+ y₂)/2 = xα  cos (β log x) ,      (y₁- y₂)/2 i =  xα  sin (β log x)     を考えると

結論にある2つの一次独立な解が得られる。 一次独立性の証明は定理2と同様にしてできる。

 例をあげよう。 


つぎに非斉次方程式を考える。

定数変化法により、定理7と同様にして次の定理をうる。 証明は演習問題とする。


定理 12  斉次方程式 (3.23)  の基本解系を y₁, y₂ とする。 このとき非斉次方程式

(3.28)    x²y'' + axy' + by  = f(x) 

 
 の一般解は、 

(3.29)     y =  y₁( - y₂f(x) / x²W[y₁, y₂] dx + C₁) 

              + y₂( y₁f(x) /x² W[y₁, y₂] dx + C₂) 

 で与えられる。 

 最後に例を1つ与える。


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