3.4 定係数 n 階線形微分方等式
この節では、前節までの結果を用いて 定係数 n 階線形微分方等式 の解の公式を与える。
(3.20) y(n) + a1y(n-1) + ・・・ + any = f(x)
とその斉次形
(3.21) y(n) + a1y(n-1) + ・・・ + any = 0
を考える。 ここで、 a1, ・・・, an は、定数とする。
すぐに確かめられるが、 非斉次方程式 (3.20) の一般解は、 斉次方程式 (3.21) の一般解と
(3.20) の一つの解(特殊解)との和で与えられる。 したがって (3.21) の一般解を求める
ことが重要になる。 (3.21) の解を y = exp(λx) の形で求めよう。 代入すると、
λn exp(λx) + a1 λn-1 exp(λx) + ・・・ + an λ exp(λx) = 0 なので、exp(λx) でわると
(3.22) λn + a1 λn-1 + ・・・ + an λ = 0
が得られる。 この n次方程式が、次のように因数分解されるとする。
非斉次方程式 (3.20) の1つの解は、 前節の定理11により計算すればよい。
最後に未定係数法についてのべよう。 簡単のため、2階方程式で説明する。
(3.1) y'' + ay' + by = f(x)
の特殊解を求める簡便な方法である。 特性方程式
(3.3) λ² + aλ + b = 0
の根を λ1 , λ2 とおく。
(I) f(x) = A(x)exp(mx); A(x) は多項式、 m は実数 とする。
(i) m が (3.3) の根でない場合、 つまり m ≠ λ1 , m ≠ λ2 のとき、
y = C(x)exp(mx); C(x) の次数 = A(x) の次数
として (3.1) に代入して 恒等式の関係から C(x) の係数を決定する。
(ii) m が (3.3) の単根の時、 つまり m = λ1 , λ1 ≠ λ2 のとき、
y = xC(x)exp(mx); C(x) の次数 = A(x) の次数
として (3.1) に代入して 恒等式の関係から C(x) の係数を決定する。
(iii) m が (3.3) の重根の時、 つまり m = λ1 , λ1 = λ2 のとき、
y = x²C(x)exp(mx); C(x) の次数 = A(x) の次数
として (3.1) に代入して 恒等式の関係から C(x) の係数を決定する。
(II) f(x) = (A(x)cos kx + B(x)sin kx)exp(mx); A(x), B(x) は多項式、m は実数 とする。
(i) m+ki が (3.3) の根でない場合、 つまり m+ki ≠ λ1 , m+ki ≠ λ2 のとき、
y = (C(x)cos kx + D(x)sin kx)exp(mx);
C(x), D(x) の次数 = Max {A(x) の次数, B(x) の次数}
として (3.1) に代入して 恒等式の関係から C(x), D(x) の係数を決定する。
(ii) m+ki が (3.3) の単根の時、 つまり m+ki = λ1 , λ1 ≠ λ2 のとき、
y = x(C(x)cos kx + D(x)sin kx)exp(mx);
C(x), D(x) の次数 = Max {A(x) の次数, B(x) の次数}
として (3.1) に代入して 恒等式の関係から C(x), D(x) の係数を決定する。
(iii) m+ki が (3.3) の重根の時、 つまり m+ki = λ1 , λ1 = λ2 のとき、
y = x²(C(x)cos kx + D(x)sin kx)exp(mx);
C(x), D(x) の次数 = Max {A(x) の次数, B(x) の次数}
として (3.1) に代入して 恒等式の関係から C(x), D(x) の係数を決定する。
f(x) が (I) の形の関数と (II) の形の関数の和であれば、それぞれの特殊解を
未定係数法で求めそれらの和を取ればよい。
例を与えよう。
ここで、述べた特殊解を求める未定係数法 は、高階の定係数方程式に対しても同様に
適用できる。 特性方程式の根の重複度に応じて x のべきをかけた形で求めると良い。
最後に、3階の方程式の例をあげる。
3.5 オイラー - ベルヌーイの 微分方等式
この節では、 教科書では述べられてないが、求積法によって解くことのできる変数係数の
2階線形方程式の例として オイラー - ベルヌーイ型 の方程式をあげよう。
この方程式は、一般のn階方程式に議論を拡張できるが、ここでは簡単のため
n=2 として説明しよう。 a, b を定数として2階の変数係数方程式
(3.23) x²y'' + axy' + by = 0
をオイラー - ベルヌーイの 微分方等式 という 。 以下変数 x > 0 とする。
この微分方程式の解は、べき関数を一般解としてもつことが知られている。 y = xm とおいて
(3.23) に代入すると、
x²m(m-1)xm-2 + axmxm-1 + bxm = xm {m(m-1) + am + b} = 0
このことより m は2次方程式
(3.24) m(m-1) + am + b = 0
の根となるように取ればよい。 (3.24) を (3.23) の特性方程式 という。
(3.24) は、2根 m₁, m₂をもつからそれらに対応する解が 基本解 になる。
(3.24) の判別式 D = (a-1)² - 4b とする。
定理 11 (i) D > 0 のとき、 (3.24) の相違な2実根を α , β とおくと、
微分方程式 (3.23) の一般解は、
(3.25) y = C₁xα + C₂xβ
で与えられる。
(ii) D = 0 のとき、 (3.24) の重根を α とおくと、
微分方程式 (3.23) の一般解は、
(3.26) y = (C₁+ C₂log x) xα
で与えられる。
(iii) D < 0 のとき、 (3.24) の相違な2虚根を α ± βi とおくと、
微分方程式 (3.23) の一般解は、
(3.27) y = xα [C₁cos (β log x) + C₂sin (β log x ) ]
で与えられる。
(証明) (i) y₁= xα と y₂= xβ が解になることは、確かめた。
y₁と y₂の一次独立性を示すために、ロンスキアンを計算しよう。 すぐに
W[xα , xβ ] = (β - α)xα+β-1 がわかるので、α ≠ β よりロンスキアンは恒等的に 0 でない。
したがって xα と xβ は一次独立になり、 (3.23) の一般解は (3.25) で与えられる。
(ii) y₁=xα が解になることは明らか。 xm を方程式に代入して計算すると
x²(xm )'' + ax (xm )' + b xm = {m(m-1) + am + b} xm
が得られる。 したがってこの式を m で微分すると xm = exp(m log x) より
dxm /dm = log x exp(m log x) = xm log x に注意すれば
x²(xm log x)'' + ax (xm log x)' + b xm log x = (m - α) {2 + (m - α)log x}xm
となり、 m = α を代入すると、 x²(xα log x)'' + ax (xα log x)' + b xα log x = 0.
つまり、 xα log x も (3.23) の解。 xα と xα log x の一次独立性の証明は 定理2の証明と
同様である。 したがって、この場合の一般解は、(3.26) で与えられる。
(iii) 複素根を持つ場合、
y₁ = xα+βi , y₂= xα-βi が2つの一次独立な解になる。 xβi = exp(i β log x) なので
オイラーの公式 exp(iβ log x ) = cos (β log x) + i sin (β log x) をつかうと、
y₁ = xα+βi = xα xβi = xα [cos (β log x) + i sin (β log x ) ] ,
y₂ = xα-βi = xα x-βi = xα [cos (β log x) - i sin (β log x ) ] ,
とかける。 したがって、 y₁と y₂の線形結合
(y₁+ y₂)/2 = xα cos (β log x) , (y₁- y₂)/2 i = xα sin (β log x) を考えると
結論にある2つの一次独立な解が得られる。 一次独立性の証明は定理2と同様にしてできる。
例をあげよう。
つぎに非斉次方程式を考える。
定数変化法により、定理7と同様にして次の定理をうる。 証明は演習問題とする。
定理 12 斉次方程式 (3.23) の基本解系を y₁, y₂ とする。 このとき非斉次方程式
(3.28) x²y'' + axy' + by = f(x)
の一般解は、
(3.29) y = y₁(∫ - y₂f(x) / x²W[y₁, y₂] dx + C₁)
+ y₂(∫ y₁f(x) /x² W[y₁, y₂] dx + C₂)
で与えられる。
最後に例を1つ与える。
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