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2018年5月6日日曜日

微分方程式講義(2018年版) V

前回の記事 微分方程式講義(2018年版) IV では例1の消し忘れがありました。修正してお詫び致します。

今回から新しい章に入る。


3章では、2階線形微分方程式の解法とその基本的な性質について学ぶ。


第3章 線形常微分方程式

3.1 定係数2階線形常微分方等式 

この節では、 a,  b を定数として2階の定係数方程式

(3.1)    y'' + ay' + by  = f(x) 

を考える。 ここで f(x) は与えられた連続関数とする。 f(x) ≡ 0  

とおいた 斉次微分方程式

(3.2)    y'' + ay' + by  = 0

の解を見出そう。 

いわゆる 定数変化法 により、 (3.2) の解から (3.1) の解は、求積法により 

求めることができる。 この事は、次節で述べる。

線形方程式に関する次の定理が成り立つ。 証明はほとんど明らか。


定理 1   y₁, y₂ が斉次微分方程式 (3.1) の解であれば、 任意の定数 C₁,  C₂ に対し

C₁y₁+ C₂y₂ もまた (3.1) の解である。



(3.1) の解の作る空間

V = {y;   y'' + ay' + by  = 0} 

とおくと、これは 2次元のベクトル空間になっている。 



つまり、2階の方程式なので、独立2つの解基本解)が存在するのである。 (理由は後に示す) 

これら独立な解の一次結合を (3.2) の一般解 という。  2つの任意定数を含むことに注意。

(3.2) を解くため、 y = exp(λx)  の形の解を求めよう。 

y' = λ exp(λx),   y'' =  λ² exp(λx)  であるから、(3.2) に代入すると

                                      (λ² + aλ  + b) exp(λx) = 0

が得られる。 exp(λx) ≠ 0  なので、このことより λ は2次方程式

 (3.3)     λ² + aλ  + b = 0


の根となるように取ればよい。  (3.3)  を (3.1) または (3.2) の特性方程式 という。

 (3.3) は、2根 λ₁, λ₂をもつからそれらに対応する解が 基本解 になる。 

詳しく言うと、次の定理が成り立つ。  判別式 D = a² - 4b  とする。



定理 2 (i)  D > 0 のとき、  (3.3) の相違な2実根を α , β とおくと、 

微分方程式 (3.2) の一般解は、


                            y = C₁exp(αx) + C₂exp(βx)

で与えられる。

  
 (ii)  D = 0 のとき、  (3.3) の重根を α とおくと、 

微分方程式 (3.2) の一般解は、

                            y =  (C₁+ C₂x) exp(αx)

で与えられる。

 (iii)  D < 0 のとき、  (3.3) の相違な2虚根を α ± βi  とおくと、 

微分方程式 (3.2) の一般解は、

                            y = exp(αx) (C₁cos βx +  C₂sin βx )

で与えられる。


 (証明) (i)   y₁=exp(αx)  と  y₂=exp(βx) が解になることは、既に確かめている。

 y₁, y₂が一次独立なることを確かめるとよい。 そのため、 



(ii)  y₁=exp(αx)  が解になることは明らか。 exp(λx)  を方程式に代入して計算すると

                       (exp(λx))'' + a (exp(λx))'  + b exp(λx) = (λ - α)² exp(λx) 

が得られる。 したがってこの式を λ で微分すると

     (x exp(λx))'' + a (x exp(λx))'  + b x exp(λx) = (λ - α) {2+x(λ - α)}exp(λx)

となり、  λ = α を代入すると、 (x exp(λx))'' + a (x exp(λx))'  + b x exp(λx) = 0. 


つまり、 x exp(λx)) も (3.2) の解。 一次独立性を示そう。 そのため、



 (iii)  複素根を持つ場合、計算により y₁ = exp(αx)cos βx,  y₂=exp(αx)sin βx  が

共に  (3.2)  の解であることを確かめられる。 

方程式を複素数係数解の範囲まで広げると、(i) と同様に 

 y₁ =  exp((α + βi) x) ,  y₂= exp((α - βi) x) が2つの一次独立な解になる。

ここで、 オイラーの公式    exp(βi x) = cos βx + i sin βx    をつかうと、

(y₁+ y₂)/2 = exp(αx) cos βx ,      (y₁- y₂)/2 i =  exp(αx) sin βx     なので、 

結論にある2つの一次独立な解が得られる。 一次独立性を確かめよう。


例をあげよう。




ここで、導入した 関数行列式 W[ y₁, y₂]  のことを y₁, y₂ ロンスキアンという。 

一般的には、次のように定義する。 





最後に今回の講義に現れたオイラーの公式で有名な数学者オイラーの紹介である。彼は数学者で膨大な量の論文を書いたことでも知られている。

オイラー人類史上最も多くの論文を書いた数学者であったと言われる。 彼の論文は5万ページを超える全集にまとめられて1911年から刊行され続けているが、その全集は100年以上たった今日でも未だに完結していない



レオンハルト・オイラー(Leonhard Euler, 1707年4月15日 - 1783年9月18日)


18世紀数学者・天文学者(天体物理学者)。 18世紀の数学の中心となり、続く19世紀の厳密化・抽象化時代の礎を築いた。解析学においては膨大な業績があり、微分積分の創始以来もっともこの分野の技法的な完成に寄与した。


ついでロンスキアンに名が残る哲学者でもあった数学者のウロンスキーを紹介する。神秘学に重きをおく特異な学者であったようです。





ユゼフ・マリア・ハーネー=ウロンスキー(Józef Maria Hoëne-Wroński、1778年8月23日 - 1853年8月8日)

ポーランドのメシアニズム哲学者数学者、物理学者、発明家、法律家、経済学者としても活動した。出生時の姓はハーネーだったが、1815年に自ら改姓している。姓はロンスキ、またはロンスキーとも表記され、線型微分方程式の理論におけるロンスキー行列式ロンスキアン)に名を残している。

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