変数係数の2階方程式
(3.4) y'' + a(x)y' + b(x)y = f(x)
を考える。 f(x) ≡ 0 とおいた 斉次微分方程式 は、
(3.5) y'' + a(x)y' + b(x)y = 0
である。 ここで、 a(x), b(x), f(x) は実数上のある区間 I で定義されているとする。
(3.4) の一つの特殊解を y₁ とする。 このとき、次の定理がなりたつ。
定理 3 y₁ を (3.4) の一つの特殊解とする。 さらに 斉次方程式 (3.5)
の一般解を y₀ とすると、 非斉次方程式 (3.4) の一般解 y は、
y = y₀+ y₁ で与えられる。
証明は、 y を一般解として y - y₁ を考えればよい。 この差は、 斉次方程式 (3.5) の
一般解になる。
定理 4 y₁, y₂ を斉次微分方程式 (3.5) の解とする。 このとき、
W[y₁, y₂](x) ≠ 0 または、 W[y₁, y₂](x) ≡ 0 である。
(証明) ロンスキアン W[y₁, y₂] のみたすべき 微分方程式を導けばよい。
この定理は、一般の場合にも拡張できることを注意しておく。
定理 4 から、次の定理が直ちにしたがう。
定理 5 a(x), b(x) を区間 I 上の連続関数とする。 x₀ を I 上の1点とする。
このとき、 微分方程式
y'' + a(x)y' + b(x)y = 0
の解で次の条件をみたす解 y₁, y₂が存在する。
y₁(x₀) = 1, y'₁(x₀) = 0 ; y₂(x₀) = 0, y'₂(x₀) = 1.
このとき、 W[y₁, y₂](x) ≠ 0 (x ∈ I) である。
ここで、 W[y₁, y₂](x₀) = (単位行列の行列式) = 1 を注意する。
定理 6 ベクトル空間
V = {y ; y'' + a(x)y' + b(x)y = 0}
の次元は2である。
(証明) y ∈ V すなわち
y'' + a(x)y' + b(x)y = 0
とする。
y₁, y₂ を定理 5 の2つの解とする。 このとき
W[y₁, y₂](x) ≠ 0 (x ∈ I) であるから、行列式論の クラーメルの公式 により
I 上の関数 c ₁(x), c₂(x) で、
c ₁(x) y₁+ c₂(x) y₂ = y (1)
c ₁(x) y'₁+ c₂(x) y'₂ = y' (2)
となるものが存在する。 (1) を微分して (2) を使うと、
c' ₁(x) y₁+ c'₂(x) y₂ = 0 (3)
がしたがう。 さらに、 (2) を微分して
c' ₁(x) y'₁+ c'₂(x) y'₂+ c ₁(x) y''₁+ c₂(x) y''₂ = y'' (4)
(1)×b(x), (2)×a(x), (4) を y'' + a(x)y' + b(x)y = 0 に代入して 整理すると
c' ₁(x) y'₁+ c'₂(x) y'₂
+ c ₁(x) (y''₁+ a(x)y'₁+ b(x)y₁) + c ₂(x) (y''₂+ a(x)y'₂+ b(x)y₂) = 0
となり、結局
c' ₁(x) y'₁+ c'₂(x) y'₂= 0 (5)
がいえる。 (3) と (5) および W[y₁, y₂](x) ≠ 0 なることから、
c' ₁(x) ≡ 0, c'₂(x) ≡ 0 となり、
c₁(x) = C₁, c₂(x) = C₂ (定数)
がいえる。 つまり、 y = C₁y₁ + C₂ y₂ となり
y は y₁と y₂の一次結合である。 これは、V が 2次元であることを示している。
(証明終わり)
一般に、 ロンスキアンが 0 にならない解 y₁, y₂ を (3.5) の
基本解 または 基本解系という。
定理 7 非斉次方程式
(3.4) y'' + a(x)y' + b(x)y = f(x)
の一般解は、
(3.6) y = y₁(-∫ y₂f(x) / W[y₁, y₂] dx + C₁)
+ y₂(∫ y₁f(x) / W[y₁, y₂] dx + C₂)
で与えられる。 ここで、 y₁, y₂ は (3.5) の基本解とする。
(証明) 定数変化法による証明を与える。
y = c ₁(x) y₁+ c₂(x) y₂ とおいて、
c ₁(x) , c₂(x) をうまく選んで この y が (3.4) の解になるようにしよう。
この方法は、斉次方程式の解の1次結合における
定数を関数に変えるという意味で、定数変化法と呼ばれる。
y' = c ₁(x) y'₁+ c₂(x) y'₂ + (c' ₁(x) y₁+ c'₂(x) y₂) (1)
なので、
c' ₁(x) y₁+ c'₂(x) y₂ = 0 (2)
なるようにしよう。 さらに、(1) を微分して (2) を使うと
y'' = c' ₁(x) y'₁+ c'₂(x) y'₂+ c ₁(x) y''₁+ c₂(x) y''₂ (3)
となるから、定理 6 の証明と同様に
y'' + a(x)y + b(x)y = f(x) に代入して整理すると、
c' ₁(x) y'₁+ c'₂(x) y'₂
+ c ₁(x) (y''₁+ a(x)y'₁+ b(x)y'₁) + c ₂(x) (y''₂+ a(x)y'₂+ b(x)y'₂) = f(x)
となり、
c' ₁(x) y'₁+ c'₂(x) y'₂= f(x) (4)
が導かれる。 (2), (4) を c' ₁(x) , c'₂(x) について連立して解くと
クラーメルの公式 により
定理 3 と 定理 7 の結論を組み合わせると 次の結果が得られる。
公式 3.1 定数係数の2階方程式
(3.1) y'' + ay' + by = f(x)
の一般解 y は、次で与えられる。
例をいくつか与える。
この節の最後に、ダランベールの階数低下法 について述べよう。
ジャン・ル・ロン・ダランベール(Jean Le Rond d'Alembert、1717年11月16日 - 1783年10月29日)
18世紀フランスの哲学者、数学者、物理学者。百科全書派知識人の中心者。
これは、斉次方程式の1つの解を用いて非斉次方程式の解を求める方法である。
斉次方程式
(3.5) y'' + a(x)y' + b(x)y = 0
の一つの解 y₁ がわかったとする。 非斉次方程式
(3.4) y'' + a(x)y' + b(x)y = f(x)
の一般解を y = uy₁ の形で求めよう。
y' = uy'₁+ u' y₁, y'' = uy''₁+ 2 u' y'₁+ u'' y₁
なので、 (3.4) に代入すると
u'' y₁+ u' (2y'₁+ a(x)y₁) + u(y''₁+ a(x) y'₁+ b(x) y₁) = f(x)
となるが、 y''₁+ a(x) y'₁+ b(x) y₁= 0 であったから
u'' y₁+ u' (2y'₁+ a(x)y₁) = f(x)
これは、 v = u' についての1階線形方程式になる。
v' + [(2y'₁+ a(x)y₁) / y₁] v = f(x)/y₁
したがって
v(x) = exp (-∫ [(2y'₁+ a(x)y₁) /y₁] dx)
×[∫ (f(x)/y₁) exp (∫ [(2y'₁+ a(x)y₁) /y₁] dx) dx]
となる。
ところで、
∫ [(2y'₁+ a(x)y₁) /y₁] dx = 2∫ (y'₁/y) dx + ∫ a(x) dx = 2log y₁+ A(x)
なので
昨年度の原稿の3-12、3-13にはミスが含まれていたので修正版で直しておいた。
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