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2018年4月4日水曜日

微分方程式講義(2018年版) I-B

1.3 微分方程式の例

 

1.落体運動と放物運動

高校の物理で習ったように、質点の落下についての微分方程式は、

(3.1)   mx"(t) = mg

 で与えられる。ここで、 m は質点の質量、 g は重力加速度を表す。

この方程式の解は、2度積分する事により

(3.2)   x(t) = (1/2)gt² + v0 t + c 

で与えられる。ここで、v0 は、質点の初速度であり、

は質点が運動を始める位置を表す。



つぎに放物運動を考えよう。



図のように原点から、水平方向となす角 θ の方向に質点を

初速度 v0 で投げるときの運動方程式

(3.3)    mx"(t) = 0,    my"(t) = - mg

で与えられる。 ここで、初期条件は

(3.4)    x(0) = 0,    y(0) = 0 ;

           x'(0) = v0 cos θ,   y'(0) = v0 sin θ

とできる。従って、積分によりこの微分方程式を解く事により

(3.5)     x(t) = v0 t cos θ,     y(t) =  - (1/2)gt² + v0 t sin θ

 で与えられる。



2.単振子

下図のような単振子を考える。



質量 m の質点に長さ l の糸を付けて、

一端を固定して鉛直面内で円弧を描くように振らせる。

このとき、この糸と鉛直方向とのなす角を θ とすると、運動方程式は

(3.6)    mlθ"(t) = - mg sin θ

となる。 θ が小さい時、 sin θ = θ と見なすと、微分方程式は線形となり、

解は、後の議論により

(3.7)    θ(t) = C1 sin αt + C2 cos αt

で与えられる。ここで、 α = √(l/g) である。


3.平面上の円の方程式


(x,y) 平面上の曲線 y = f(x) が十分滑らかとする。 このとき、この曲線の曲率は、

             y"/(1+y'²)³/²

で表わされる。 


この曲率が一定のとき、つまり


(3.8)     (d/dx) y"/(1+y'²)³/² = 0 なるときを考える。 

(3.8) を実際に計算して整理すると

(3.9)     y"'(1+y'²) - 3y'y''² = 0

が得られる。 (演習問題

(3.9) は、 3階の非線形微分方程式である。 この微分方程式を解くのは難しいが、

一般解は、

(3.10)     x² + y² + 2ax + 2by + c  = 0     (a² + b² > c)

で与えられることが知られている。 ここで、 a, b, c は任意定数である。

(3.10) を、 3回微分して定数 a, b, c を消去すれば微分方程式 (3.9) が得られる。

これを確かめてみよ。  (演習問題

さて、(3.10) は一般の円の方程式を表すので、

曲率一定な曲線は円

ということができる。




.熱伝導の方程式


熱伝導の方程式とは、時間と共にその物質の温度分布がどのように推移するかを、

表現した偏微分方程式である。 



3次元 (x,y,z)-空間内の物体 G の時刻 t における温度 u = u(x,y,z) は、

偏微分方程式

(3.11)     (∂/∂t) u = (∂²/∂x²) u + (∂²/∂y²) u + (∂²/∂z²) u


 をみたす。この方程式を 熱伝導の方程式(熱方程式) という。 微分作用素

       (∂²/∂x²) + (∂²/∂y²) + (∂²/∂z²) ≝ Δ

のことを(3次元)ラプラシアン という。数理物理上、最も重要な作用素の1つである。

空間次元が1のときの熱方程式は、

     (∂/∂t) u(t,x) = (∂²/∂x²) u(t,x)

空間次元が2のときは、

     (∂/∂t) u(t,x,y) = (∂²/∂x²) u(t,x,y) + (∂²/∂y²) u(t,x,y) 

である。

 このようなタイプの方程式を、放物型偏微分方程式 という。


 .振動の方程式


振動の方程式とは、物体の振動現象(変位が時間と共に、どのように推移するか)を、

記述した偏微分方程式である。



膜の振動のシミュレーション


3次元 (x,y,z)-空間内の振動する物体 G の時刻 t における変位 u = u(x,y,z) は、

偏微分方程式

(3.12)     (∂²/∂t²) u(t,x,y,z) = Δ u


 をみたす。 この方程式を 振動の方程式(波方程式)という。 

空間次元が1のときの波動方程式は、

      (∂²/∂t²) u(t,x) = (∂²/∂x²) u(t,x)

空間次元が2のときは、

      (∂²/∂t²) u(t,x,y) = (∂²/∂x²) u(t,x,y) + (∂²/∂y²) u(t,x,y) 

である。

このようなタイプの方程式を、双曲型偏微分方程式 という。

これらの偏微分方程式の詳しい解析は応用数理Cで講義する予定である。

これで、第1章は終了。

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